採用ブランディングとは|法令が定める公開項目と4つの型
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結論:採用ブランディングとは、候補者が入社を判断するための材料を、自社から先に出しておくことです。「働くリアルを見せる」という抽象的な話ではありません。若者雇用促進法では、新卒等の募集にあたって提供する職場情報の項目が定められており、有給休暇の平均取得日数や平均勤続年数など、出す内容がすでに決まっています。
株式会社TaTap(SNSマーケティング支援会社)は、累計300アカウント以上のSNS運用を支援してきました。中小企業の採用の相談で最初に確認するのは、この項目を集計しているかどうかです。集計できていれば、発信の材料はすでに社内にあります。
この記事の要点
- 採用ブランディングとは、入社の判断材料を自社から先に出しておくことです。
- 若者雇用促進法では、提供する職場情報の項目が3類型で定められています。
- 有給休暇の平均取得日数、月平均所定外労働時間、平均勤続年数などが対象です。
- 厚生労働省は、企業が自主的・積極的に情報提供を行うことが望ましいとしています。
- 就業規則に規定がなくても、継続的に実施し周知していれば「有」として提供されます。
- 若者の雇用管理が優良な中小企業を認定するユースエール認定制度があります。
- 発信の型は4つに分かれ、会社の規模と業種で向き不向きがあります。
採用ブランディングとは何ですか?
結論:入社の判断材料を先に出しておくことです。イメージづくりではありません。
採用ブランディングという言葉は、社名の認知を上げる活動として語られることが多くあります。ただし中小企業にとって、認知そのものを上げる費用対効果は高くありません。効くのは、候補者が知りたい情報を調べたときに揃っている状態を作ることです。
| よくある理解 | 実際に効くこと |
|---|---|
| 社名を知ってもらいます | 調べたときに情報が揃っています |
| かっこいい採用サイトを作ります | 数字が具体的に書かれています |
| 社内の雰囲気の写真を出します | 仕事の中身が分かります |
| 理念やビジョンを掲げます | 働き方の条件が明示されています |
| すべてを良く見せます | 向いていない人の条件も書きます |
候補者の行動を考えると理由がはっきりします。求人を見た人は、まず会社名で検索します。そこで出てくるのが古い会社概要だけなら、判断材料がないまま応募するかどうかを決めることになります。中小企業ほど、この検索結果で差がつきます。
判断材料が揃っていないと、候補者は不安を理由に応募しません。逆に、条件が明確であれば、条件に合う人だけが応募します。応募数は減る場合がありますが、選考の通過率と内定承諾率は上がります。
中長期の戦略と業種別の考え方は採用ブランディング SNSとは|累計300社支援のプロが解説する中長期戦略と業種別アプローチで解説しています。本記事は出す材料の中身に絞って扱います。
「働くリアル」として見せる項目は決まっていますか?
結論:決まっています。若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供項目です。
図:若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供項目
厚生労働省の職場情報の提供制度のページには、提供項目が3類型で示されています。(ア)募集・採用に関する状況、(イ)職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況、(ウ)企業における職場定着に関する取組の実施状況です。
具体的な項目は、直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数、その男女別人数、平均勤続年数、研修の有無及び内容、自己啓発支援の有無及び内容、メンター制度の有無、キャリアコンサルティング制度の有無及び内容、社内検定等の制度の有無及び内容、前事業年度の月平均所定外労働時間の実績、前事業年度の有給休暇の平均取得日数、前事業年度の育児休業取得対象者数と取得者数、役員に占める女性の割合と管理的地位にある者に占める女性の割合です。
| 類型 | 項目の例 | 発信での使い方 |
|---|---|---|
| (ア)募集・採用の状況 | 新卒採用者数・離職者数 | 定着の実態を示せます |
| (ア)募集・採用の状況 | 平均勤続年数 | 長く働けるかを示せます |
| (イ)能力開発の取組 | 研修の有無及び内容 | 育てる姿勢を示せます |
| (イ)能力開発の取組 | メンター制度の有無 | 未経験者の不安に答えます |
| (ウ)職場定着の取組 | 月平均所定外労働時間 | 残業の実態を示せます |
| (ウ)職場定着の取組 | 有給休暇の平均取得日数 | 休みやすさを示せます |
これらの項目は、集計すれば自社にある数字です。新しく調べる必要はほとんどありません。勤怠管理と人事の記録から出せるものが大半で、着手のハードルは低い作業です。
重要なのは、厚生労働省が「企業がホームページでの公表、会社説明会での提供、求人票への記載などにより、自主的・積極的に情報提供を行うことが望ましい」としている点です。求められてから出すのではなく、先に出しておくほうが望ましいと示されています。
制度の有無についても押さえておくべき注記があります。制度として就業規則等に規定されているものでなくても、継続的に実施していて従業員に周知されていれば「有」として情報提供されるとされています。社内検定については、業界団体等が実施する検定を活用する場合も「有」とされています。制度化していないから出せないと判断する必要はありません。
中小企業が使える公的な認定はありますか?
結論:ユースエール認定制度があります。第三者の評価として使えます。
ユースエール認定制度は、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を、若者雇用促進法にもとづき厚生労働大臣が認定する制度です。認定を受けると、ハローワークでの重点的なPRや、認定マークの使用ができます。
認定の基準には、上で挙げた雇用情報の項目を公表することが含まれています。つまり、職場情報を集計して公開する作業は、認定の申請準備とほぼ同じです。同じ手間で2つの成果が得られます。
| 取り組み | 得られるもの |
|---|---|
| 職場情報の集計と公開 | 候補者の判断材料になります |
| ユースエール認定の取得 | 第三者の評価として示せます |
| 認定マークの使用 | 採用ページやSNSで使えます |
| ハローワークでのPR | 公的な経路での露出が増えます |
| 若者雇用促進総合サイトへの登録 | 検索で見つけられる状態になります |
中小企業にとって、自社で「働きやすい会社です」と言うより、公的な認定を示すほうが伝わります。認定の要件や手続の詳細は、所在地の都道府県労働局に確認してください。
成功している会社は何をしていますか?
結論:4つの型に分かれます。自社の条件に合う型を1つ選んでください。
図:採用ブランディングの4つの型と向く会社
以下は、TaTapが支援してきた事例とご相談の内容から、発信の型を整理したものです。特定の企業名は挙げず、共通する構造として示します。
| 型 | やっていること | 向く会社 |
|---|---|---|
| 数字を先に出す型 | 有給取得日数や残業時間を公開します | 条件が整っている会社 |
| 仕事の中身を見せる型 | 1日の流れや作業を動画にします | 製造・建設・物流など |
| 人を前に出す型 | 同じ社員が繰り返し登場します | 少人数の会社 |
| 認定・実績で示す型 | 公的な認定や取引実績を根拠にします | BtoBの中小企業 |
4つのうち、中小企業で最も再現性が高いのは「人を前に出す型」です。大手企業は個人を前に出しにくい一方、少人数の会社では社員個人が認知され、入社の決め手が「この人と働きたい」に変わります。撮影の費用もかかりません。
「仕事の中身を見せる型」は、職種のイメージがつきにくい業種で効果が出ます。製造や建設では、実際の作業を見ないと応募の判断ができません。きれいな映像より、作業の手元が分かる映像のほうが役割を果たします。
どの型でも共通しているのは、続けている点です。3か月で止めた会社と1年続けた会社では、候補者が調べたときに出てくる情報量がまったく違います。型の選択より、選んだ型を続けられるかで結果が分かれます。
SNSを軸にした採用施策の全体像はSNS採用の完全ガイド|7メリットと始め方5ステップで採用エージェント比360万円削減【2026年版】で解説しています。
進め方の手順はどうなりますか?
結論:材料を集めてから設計します。逆の順序で始めると止まります。
図:採用ブランディングの進め方4ステップ
- 出せる数字を棚卸しします。有給取得日数、所定外労働時間、平均勤続年数、離職者数を集計します。
- 法令の提供項目から揃えます。どこかで必要になる数字なので、無駄になりません。
- 入社者に理由を聞きます。なぜ入ったかが、発信すべき内容を決めます。
- 退職者に理由を聞きます。辞めた理由は、伝え方の修正点になります。
- 言わないことを決めます。向いていない人の条件を書くと、残る候補者の質が上がります。
- 3か所で同じ内容を出します。採用ページ、SNS、求人票の内容を揃えます。
- 月8本を目安に続けます。半年から1年かけて蓄積します。
5番目の「言わないことを決める」は、社内で議論が起きやすい工程です。良くない情報を出すことへの抵抗があるためです。ただし入社後に判明する情報を隠しても、早期退職として跳ね返ります。先に伝えるほうが総合的な損失は小さくなります。
3番目と4番目を飛ばす企業が多くあります。自社が思う強みと、実際に選ばれた理由は一致しないことが頻繁にあります。入社者に聞くと、給与や制度ではなく面接官の対応が決め手だった、という答えが返ることも少なくありません。
他の施策と比較すると、費用はどう違いますか?
結論:立ち上がりは遅い一方、続けるほど1人あたりの費用が下がります。
| メニュー | 費用 | 含まれるもの |
|---|---|---|
| Instagramアカウント運用 | 月300,000円〜+コンサル費100,000円 | 企画・制作・投稿・分析 |
| ショート動画運用 | 月400,000円 | 月8本の撮影・編集・投稿 |
| コンサルティング(月1回) | 月200,000円 | 材料の棚卸し・発信設計 |
| ショート動画制作(1本) | 30,000円〜 | 企画・台本・編集 |
| 静止画投稿制作(1本) | 30,000円〜 | 企画・制作・投稿文 |
| 初期対応費 | 100,000円/回 | アカウント設計・初期設定 |
求人媒体や人材紹介は、1人採用するたびに費用が発生します。採用ブランディングは初期に時間がかかる一方、蓄積した投稿と数字は残ります。2年目以降は同じ費用で母集団が増えていく構造です。
| 施策 | 立ち上がり | 費用の性質 |
|---|---|---|
| 求人媒体 | 速いです | 毎回発生します |
| 人材紹介 | 速いです | 採用時に発生します |
| 採用ブランディング | 遅いです | 蓄積が残ります |
| ユースエール認定 | 中程度です | 取得後は維持のみです |
ユースエール認定のように、取得後は維持のみで済む取り組みもあります。認定の取得には手間がかかりますが、一度取れば採用ページと求人票の両方で使い続けられます。費用をかけずに第三者の評価を示せる点で、中小企業に向いています。
予算が限られている中小企業では、媒体で今年を埋めながら、ブランディングを並行して育てる形が現実的です。どちらかに全振りすると、今年が埋まらないか、来年も同じ費用がかかります。
採用ブランディングでよくある失敗は何ですか?
結論:材料を集めずに発信を始めることです。内容が続きません。
| 失敗 | 起きること | やるべきこと |
|---|---|---|
| 数字を集計していません | 発信内容が抽象的になります | 提供項目から集計します |
| すべてを良く見せます | 他社と同じ内容になります | 言わないことを決めます |
| 雰囲気の写真だけ出します | 判断材料になりません | 条件と数字を出します |
| 採用期だけ発信します | 蓄積が残りません | 通年で続けます |
| 3か所で内容が違います | 候補者が混乱します | 採用ページと揃えます |
| 入社者に理由を聞きません | 強みの認識がずれます | 入社時に聞き取ります |
2番目が最も多い失敗です。残業がない、人間関係が良い、成長できる、と並べると、どの会社の採用ページとも同じになります。差がつくのは、他社が書かないことを書いたときです。繁忙期がある、転勤がある、覚えるまで半年かかる、といった内容を理由とともに書くと、条件を理解した人だけが応募します。
ブランド想起の観点での設計は採用SNSの重要性と戦略|「バズ」を狙わず「ブランド想起」で優秀な人材を獲得するにまとめています。
どんな企業に向いていますか?成果はどの期間で出ますか?
結論:毎年採用を続ける企業に向いています。判断は1年です。
| 状況 | 向いている進め方 |
|---|---|
| 毎年採用を続けています | ブランディングを育てます |
| 今年だけ1名採用します | 媒体と紹介を使います |
| 知名度が低い業種です | 仕事の中身を見せます |
| 少人数の会社です | 社員個人を前に出します |
| 条件が整っています | 数字を先に公開します |
| BtoBで実績があります | 認定と取引実績で示します |
成果が出るまでには時間がかかります。候補者が転職や就職を考え始めるタイミングは、こちらで選べません。発信を続けて、考え始めた時点で情報が揃っている状態を作る施策です。
TaTapが全国の20〜49歳男女435名を対象に実施した「買う場面(CEP)とSNSの関係調査」では、SNSで見たときは今すぐ必要ないと思った商品を、後日その場面が訪れたときに思い出して購入した経験がある人は69.6%でした(SNSで商品情報を見かける336名ベース)。購買の調査ですが、転職を考え始めた時期に以前見た会社を思い出す構造は同じです。
| 期間 | 見る数字 | やること |
|---|---|---|
| 1〜3か月目 | 集計できた項目数、投稿本数 | 材料を揃えます |
| 4〜6か月目 | 採用ページの閲覧、保存数 | 反応の良い内容を増やします |
| 7〜12か月目 | 指名検索、応募経路の内訳 | 継続の判断をします |
採用ファネル全体との関係は採用マーケティング×SNSの完全ガイド|ファネル7階層を統合設計する戦略と一次情報トレンド【2026年版】を参照してください。
よくある質問
Q1. 採用ブランディングとは何をすることですか?
候補者が入社を判断するための材料を、自社から先に出しておくことです。社名の認知を上げる活動として語られますが、中小企業では認知より判断材料の充実が効きます。有給休暇の平均取得日数や平均勤続年数といった数字を公開し、調べたときに揃っている状態を作ってください。
Q2. 何を公開すればよいですか?
若者雇用促進法にもとづく職場情報の提供項目から始めてください。厚生労働省は3類型として、募集・採用に関する状況、職業能力の開発・向上に関する取組、企業における職場定着に関する取組を示しています。新卒採用者数と離職者数、平均勤続年数、研修の有無、有給休暇の平均取得日数などが含まれます。
Q3. 制度化していない取り組みは公開できませんか?
公開できます。厚生労働省は、制度として就業規則等に規定されているものでなくても、継続的に実施していてそのことが従業員に周知されていれば「有」として情報提供されると説明しています。社内検定については、業界団体等が実施する検定を活用する場合も「有」とされています。
Q4. 中小企業が使える公的な認定はありますか?
ユースエール認定制度があります。若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業を、若者雇用促進法にもとづき厚生労働大臣が認定する制度です。認定基準には雇用情報の公表が含まれるため、職場情報を集計する作業が申請準備を兼ねます。
Q5. 良くない数字は隠したほうがよいですか?
隠すより、理由とともに出すほうが機能します。残業が多い、離職者が出た、といった数字は、背景と改善の取り組みを添えて示してください。隠したまま入社した人は、実態を知った時点で辞めます。条件を理解した人だけが応募する状態のほうが、定着します。
Q6. 成果が出るまでどのくらいかかりますか?
1年を目安にしてください。1〜3か月目は集計と投稿の体制づくり、4〜6か月目は反応の良い内容の見極め、7〜12か月目で指名検索と応募経路の変化を見ます。候補者が転職を考え始めるタイミングは選べないため、続けて蓄積する施策です。今年1名だけ採用する場合は、媒体のほうが速く動きます。
最終更新:2026年9月25日/執筆:株式会社TaTap 編集部(監修:代表取締役 富田竜介)
支援企業の成功事例
指名検索と情報の蓄積で成果を出したTaTapの支援事例を紹介します。自社の課題に近いケースを参考にしてください。
