マーケティングに必須の「パレートの法則」 実は誤解されている?
- パレートの法則がわかる
- 5:25の法則がわかる
- パレートの法則の活用方法がわかる
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マーケティングをするにあたって必須知識ともいえる「パレートの法則」。これに基づいてマーケティングを展開することは少なくないのでしょうか。他にも5:25の法則など成功のための法則がいくつかあり、いずれも大きく広まっている法則ですが、実は日本において、パレートの法則はその意味が誤解されて広まっていると指摘されています。意外な指摘ではありますがマーケティングにおいて、誤った知識を持ってマーケティングを担当しても成果は上がらなくなってしまうので知識の整理が必要です。そこで本記事では、「パレートの法則」の正しい意味や、どの様に間違われているか、正しく扱うためのはどうすればよいかを解説しますので最後までご覧ください。
パレートの法則、5:25の法則とは
パレートの法則や5:25の法則について紹介していきます。
パレートの法則
パレートの法則は「80:20の法則」とも言われマーケディングにおいては「売上の8割は、2割のファン、ヘビーユーザーに依存する」という傾向を指すものです。これは集団の報酬がその集団の一部に集中するという経験則になります。
「80:20」の数値自体には絶対的な意味はなく、集中傾向を端的に表しているにすぎないともいわれています。
その起源はイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート氏が1896年に論文で発表したもので、欧州における経済統計の分布を調査したところ「全体の富の8割を上位2割の人口が保有し、8割の人口で残りの2割をわけている」という所得分布の経験則を発見したものです。
5:25の法則
5:25の法則は顧客離れを改善すれば利益率が25%改善されるという法則です。
新規顧客に商品を販売するためには、既存の顧客に商品を販売する時の5倍のコストがかかる(1:5の法則」ために、新規顧客を開拓するよりも既存の顧客を離脱させない事、既存顧客の売上を増加させることが重要という考え方になります。
いずれもマーケディングには非常に重要な法則ですが、次からはパレートの法則に焦点を当てて解説していきます。
パレートの法則が誤解されているというのはどういうことか?
冒頭でも紹介したようにパレートの法則は誤解されているケースが多く見られています。それらについてみていきましょう。
マーケディングにおけるパレートの法則の「売上の8割は、2割のファン、ヘビーユーザーに依存する」という点にたいして、いくつかの実証研究があります。
英国の約1万2000世帯の購買行動を追跡したデータ用いた研究では、年1回以下しか購入しない80%のライトユーザーの売り上げが全体の40%を占めており、パレート比は「60:20」になると指摘しています。
この比率は意外であるのと同時に、思い当たる部分もあるのではないでしょうか。
南オーストラリア大学アレンバーグ・バスの研究リポートでは以下のエビデンスを挙げています。
- マーケディングでは80:20にはならない
- 上位20%のヘビーユーザーは、その年の売り上げの約半分の50~60%を占める
- 調査期間により上位20%のヘビーユーザーの売上貢献は変わる。期間を長くとるほど上位20%の貢献割合が高くなる。
- 現在のヘビーユーザーの約50%は、1年以内にヘビーユーザーではなくなる。
このように実際に調査研究したことにより、パレートの法則が当てはまらないケースが多い事がよくわかります。
その原因はデータ上、ヘビーユーザーにみえるライトユーザーが多いこととされています。
多くの顧客管理では一定期間に平均より数回多く商品を購入するだけで、ヘビーユーザーとカウントされます。しかし実際のところ、消費者は購買毎にランダムに買うものを決めていることが多くあります。そのため、そのブランドや商品に対して強い好意、ロイヤリティがなかったとしても、たまたま、その年に、そのブランドや商品を数回多く購入するだけでヘビーユーザーになってしまいます。
この顧客たちは実際にはロイヤリティが高くリピートしているわけではありませんから、直ぐにライトユーザーに戻ってしまいます。単に確率として起こっている現象ですから、ライトユーザーの購買頻度に戻ってしまうのは目に見えています。
このようにデータ上ではユーザーに入れ替わりがあるにも関わらず、一部の数値(ヘビーユーザー)にフォーカスしすぎたために誤った認識が強まっていることが、パレートの法則について誤解を広めた原因といえるでしょう。しかし、年に複数回の購買によりヘビーユーザーにかわるユーザも出てきますので、ライトユーザーをないがしろにしてはいけないことを忘れないで下さい。
またパレートの法則はマーケディング以外にも「売り上げの8割は、全従業員の2割で出している」という大企業ならではの例や、機会を例にとった「機械の故障の8割は全部品のうち2割の部品に原因がある」などマーケディング以外の例と混同し認識していることも誤解を理由かもしれません。
パレートの法則の正しい認識
前述のようにマーケディングにおいて、パレートの法則は必ずしも当てはまるわけはないことが良くお分かりいただけたと思います。マーケティングではパレートの法則の「80:20」という数値にこだわらず大切にすべきことが多くあります。それを大切にすることでマーケティングは大きく発展します。
パレートの法則の正しい認識と活用方法を解説します。
分布を予測
たとえば美容室の売上は全メニューの2割がトリートメントメニューで成り立っています。このように集客や売上に繋がる部分はパレートの法則から重要と考えられる要素を導きやすくなります。
予測から施策を立案し実施
この重要な2割を見いだせたら、施策を立案し実施しましょう。この美容室の例であれば、トリートメントメニューの品質を強化する事です。この売上を作る2割に注力することで、効率よく売り上げアップが見込めます。
この分布の予測と、予測立案・実施が非常に重要です。
事実、IBMは世界で最初にパレートの法則を導入し、成果を出したといわれています。IBMは自社パソコンのうち2割の機能を使うためにユーザのパソコンの使用時間の8割が使われていることを発見し、その2割を徹底的に使いやすくした新商品を開発し販売するとあっという間にヒット商品になっています。
しかし企業には様々な業種があり、美容業界やIT業界の例のように当てはまるわけではありません。自社の得意分野を正しく把握し、数値にとらわれず自社に蓄積されたデータをもとにマーケティングを展開していくことが大切になります。パレートの法則を正しく利用するには、データを収集し、きめ細やかに分析する必要があります。その為にデータの管理の徹底、分析を正しくすることが重要です。
パレートの法則は「80:20」にこだわらず、無理に当てはめず「傾向が見える」程度にとどめておくとことで役に立つ知識の一つとして役立つことでしょう。
まとめ
昔からマーケティングにおいて重要とされている「パレートの法則」について解説してきました。確かに傾向としては「80:20」という比率があるかもしれませんが、マーケティングにおいては全ての事が、この法則が必ずしも当てはまるわけでは無い事が良くお分かり頂けたと思います。重要なのは自社・自身のデータをしっかり管理した上で、精査・振り返り分析する事、それを根拠としてマーケディングを展開していく事です。そうすることで、展開するマーケディングがより発展していく事でしょう。