2024.03.09

上司と部下のコミュニケーション 距離感はどう測ればよい?

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目次

職場における上司と部下の問題は、要因は様々ですが時代の変化とともに常につきまとう問題です。

日々の上司と部下のコミュニケーションに問題があると、情報共有や報告、相談がされないなどの思わぬリスクに繋がることもあります。

今回は、上司と部下の間で起こるコミュニケーションの問題や悩みについて、また、最近話題となっている「ヤマアラシのジレンマ」について解説しますので、最後までご覧ください。

上司と部下のコミュニケーションの悩みについて〜上司側

龍谷大学が行った、新年度に向けて企業の上司・部下1000人を対象に、関係性や世代間ギャップについてのアンケート調査の結果によると、部下のことを理解したい、でも踏み込みづらいと感じている「片想い上司」と、仕事とプライベートにきっちり線引きをする、反応の読めない「仮面部下」の実態が見えることがわかりました。

それぞれ上司側と部下側に分けて、調査結果を詳しく見ていきます。

上司と部下の間での「ギャップ」とその要因

上司と部下の間で「ギャップを感じているか」という質問に対して、上司の44.8%の人が「とても感じている」(13.4%)「やや感じている」(31.4%)と回答しました。

また、「何故ギャップが生まれるのか」という要因については、以下の通りの回答がありました。

1位:立場が違うから(46.8%)

2位:「常識」の考え方が違うから(34.4%)

3位:コミュニケーションにすれ違いがあるから(27.0%)

4位:年齢が違うから(25.8%)

5位:生まれ育った時代背景が違うから(23.0%)

※龍谷大学実施のアンケートより引用 何故ギャップが生まれるのか 上司側のランキング結果参照

価値観が合わないと諦めているのは、約7割

「部下との価値観が合わないとあきらめているか」という質問では、上司の69.8%が「とても感じている」(13.2%)「やや感じている」(56.6%)と答えました。

部下を理解したいと思う反面、「何を考えているか分からない」と困惑

「部下を理解したいと感じているか」という質問では、上司の75.0%が「とても感じている」(19.0%)「やや感じている」(56.0%)と回答しました。ですが、「部下の考えていることがわからない」という質問に対して、上司の45.2%が「とても感じている」(7.0%)「やや感じている」(38.2%)と回答がありました。

理解をしたいと感じている一方で、部下の考えが分からず困惑しているという事実も見えてきました。

部下に感じるギャップの具体的な例

「職場の部下との間に感じるギャップ」として自由に回答してもらった結果、「不服の顔を見せるが意見は言わない」「反応が薄いため、真意がわかりずらい」「考え方がクール」「マイペース」など、部下の反応の薄さに困惑しつつ、「仕事の範囲に線引きをしている」「言われてないのでやらないというスタンス」「我関せず、という感じがする」など、割り切る姿勢に「踏み込みづらさ」を感じているということがわかりました。

上司と部下のコミュニケーションの悩みについて〜部下側

続いて、同じアンケート調査の部下側から見た結果をご紹介します。

部下側も上司と同じく、約半数が「ギャップ」を感じている

職場の上司との間に「ギャップを感じるか」の質問に対して、部下の51.6%が「とても感じている」(14.0%)「やや感じている」(37.6%)と回答していることがわかりました。

「なぜギャップが生まれるのか」に挙げられたのは、以下の通りです。

1位:年齢が違うから(40.4%)

2位:立場が違うから(40.0%)

3位:生まれ育った時代背景が違うから(28.0%)

4位:「常識」の考え方が違うから(27.4%)

5位:コミュニケーションにすれ違いがあるから(21.8%)

上司側も部下側も、順位の違いはありますが、共通しているのが「立場」「年齢」「常識」「時代背景」の違いや、「コミュニケーションのすれ違い」によるものと考えていることがわかります。

約7割が価値観が合わない諦めている

こちらも、上司側と同様に「上司と価値観が合わないとあきらめているか」という質問に対し、部下の68.8%が「とても感じている」(21.0%)「やや感じている」(47.8%)と回答しています。

「相手を理解したい」という意識に少し差がつく

「部下を理解したいと感じているか」という質問では、上司の約7割が感じていると回答したのに対し、「上司を理解したい」と感じている部下側の考えは62.0%(「とても感じている(12.8%)」「やや感じている(49.2%)」)に留まり、上司側と13.0ポイントの差が生まれました。

また、「上司の考えていることが分からない」という質問に対しては、55.0%が「とても感じている」(12.4%)「やや感じている」(42.6%)と回答しています。

上司に感じるギャップの具体的な例

「職場の部下との間に感じるギャップ」として自由に回答してもらった結果、「会話のテンポ」や「ノリの違い」「たとえ話が分からない」「言葉や話し方の違い」など、コミュニケーションの違和感による上司との「話しづらさ」を感じていることがわかりました。

また、「オンオフの切り替え」「ワークライフバランスに対する考え方」「親睦会や飲み会などの必要性」「プライベートと仕事の両立の仕方」など、仕事とプライベートの境目が曖昧な上司への違和感を感じていることもあげられました。

「ヤマアラシのジレンマ」について紹介

近年では、こうした上司・部下との間でも起こりうる現象として「ヤマアラシのジレンマ」という言葉を耳にすることはないでしょうか。

「ヤマアラシのジレンマ」とは、人間同士が仲良くなろうとして心の距離を近づけるほど、お互いに傷つけあって一定距離以上は近づけない心理のことを指します。

人間同士が仲良くなるためには「相手へ近づくこと」が絶対条件となりますが、近寄り過ぎることでお互いの考え方の違いから緊張感に苛まれ、藩閥が起きてしまうことがあります。ところが、それを恐れて離れすぎてしまうと、疎外感が生まれて違和感を抱いてしまいます。

なぜ「ヤマアラシのジレンマ」と呼ぶのか

なぜ「ヤマアラシのジレンマ」と呼ばれるのか、次のような説があります。

ジレンマとは、葛藤やイライラ、もどかしさという意味を持ちます。

アメリカの精神分析医であるベラック氏は、哲学者ショーペンアウアーの寓話に出てくる2匹のヤマアラシが、寒い冬の日に互いに暖を取ろうと身を寄せ合ったところ、身体のとげが互いを指してしまうが、身体を離すと寒さに耐えられなくなってしまうため、互いに近づいたり離れたししながら傷つけずに暖め合える距離感を探る様を描いた部分を、「互いに親密になりたいのに近づけない」という人間関係の葛藤に似ているとして「ヤマアラシのジレンマ」と名づけたといわれています。

以上を踏まえて、上司側へのアドバイス

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上司と部下における人間関係は非常に複雑で繊細です。特に今の若い世代は、ベテラン社員が経験した好景気の時代をしらず、仕事に強い欲求や明るい展望を持っていないかもしれません。

ベテラン社員が大事にしてきた人情を大切にした人間関係、頻繁に行われる社内の交流や飲み会、社員旅行などに対して必ずしも良い印象を持っていない可能性がある事を忘れないでください。

なぜならインターネットやSNS、サブスクリプションが発達し1人でも楽しめますし、仕事に対しても人情よりも根拠や効率を大切にする人が多くいるからです。

仕事と良い人間が密接だった時代と異なり、「仕事は仕事」「プライベートはプライベート」とキッチリ分かれ、オンとオフの切り替えを重視する時代に変わってきているのも現状です。今の若い世代とは、そもそも仕事に対する認識が異なっているのも1つの事実なのです。

このような、お互いの間に生まれたギャップを埋めようと、距離感を間違えると相手を傷つけてしまったり、疎外感を抱かせてしまうこともあります。ましてやハラスメントについての問題が多く浮上する昨今、ちょっとした価値観の違いがハラスメントに繋がる事さえあります。

ベテラン社員も最初は皆、若手です。若い時代に嫌だった上司がいたのではないでしょうか?そのいやな上司の姿も変わってきているかもしれません。

もしも部下との人間関係に悩み、「ヤマアラシのジレンマ」に陥ってしまったら、寓話に出てきたヤマアラシのように「互いに適切だと思える距離を見つける」ことが大切です。

自分にとっては何でもないことだとしても、相手にとっては不快に感じてしまうこと、もしくはその逆も存在します。お互いが別の人間である以上は、気持ちや考え方のすべてを理解し合うことは不可能だといえます。

お互いに適切な距離感を見つけるには、まず他人と自分は違う人間であることを認識すること、そして相手の言葉を注意深く傾聴し、自分の気持ちを整理して相手にわかりやすく伝えるコミュニケーションを心掛けましょう。お互いを尊重しあうことで、ヤマアラシのジレンマを乗り越えられるでしょう。

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