生活者は平均1.5か所しか見ない?SNS時代のUGCと口コミの本質─「検索」から「意思決定」へ変わる購買行動
- 購買時に参照される情報源は平均1.5か所
- 価格や検討期間が長いほど参照先は増加
- UGCは購買判断の最終ジャッジを担う存在
- UGCは検索起点 比較基準 後押しの三役
- SNSは拡散の場から意思決定の場へ変化
- 企業はUGCが生まれ循環する運用設計が重要
読了目安:約分
SNS時代の消費者がどのようなプロセスで「買う」を決めているのか、その核心に迫ります。キーワードは、最新の調査データが示す「1.5」という数字です。
生活者は「平均1.5か所」のレビューしか見ない|SNS UGC 口コミ レビュー

現代のマーケティングにおいて、誰もが口にするのが「口コミ」の重要性です。「購買意思決定の9割がネットの口コミで決まる」といった言説は、もはや当たり前の常識として定着してきました。
しかし、今を生きる生活者のリアルな行動を深掘りすると、ある象徴的なデータに突き当たります。それは、「生活者は何かを買う際、平均して1.5か所以上のレビューや口コミを参照している」という事実です。
なぜ「1」でもなく、「3」や「5」でもなく、「1.5」なのでしょうか。
自身の消費行動を振り返る
私自身の経験を振り返っても、この数字には強い納得感があります。
- 低価格帯(数千円程度)の商材: 化粧品などを買うときは、まずSNSで口コミをチェックし、念のためにAmazonや楽天のレビューを見る。これでだいたい2か所。この程度で判断は終わります。
- 高価格帯・長検討期間の商材: 1〜2年前にソファを購入した際は、Instagram、X、公式サイト、さらにはTikTokまで、4〜5か所を徹底的に巡りました。
つまり、価格が高かったりリードタイムが長かったりする商品ほど参照される情報源は増えますが、市場全体を均せば「1.5か所」に集約されるのです。
「1.5」が意味する2つの真実
この「1.5」という数字は、生活者が何でもかんでもチェックしているわけではないことを示唆しています。ここには、相反するようでいて同時に成立している2つの真実があります。
- 「自分が心から信頼できるプラットフォームだけ」を選別して見ている。
- 「そこに良いUGC(ユーザー生成コンテンツ)がなければ買わない」。
現代の消費において、レビューは単なる参考情報ではなく、「最終的な意思決定のジャッジ(決定打)」になっています。リスクを回避するための「リスクヘッジ購買」において、UGCはCVR(成約率)を最大化する最も重要な役割を担っているのです。
SNS時代のUGCが果たす「3つの役割」|SNS UGC 口コミ レビュー

生活者が1.5か所しかチェックしないのであれば、企業はあちこちで薄い露出を狙うのではなく、ターゲットが見る「その場所」で濃いUGCを形成しなければなりません。そのためには、UGCが持つ3つの役割を理解する必要があります。
① 検索の起点としてのUGC(検索のUGC化)

特にZ世代を中心とした若い層は、もはや商品名をGoogleの検索窓に入力しません。彼らのファーストチョイスは、InstagramやTikTokの検索窓です。
- 「スキンケア おすすめ」「渋谷 ランチ」といった検索をSNS上で行う。
- 検索結果として、企業の公式サイトや広告ではなく、いきなり個人のUGCが表示される。
- 企業のLP(ランディングページ)や比較サイトは、そのずっと後から確認される存在。
今や検索結果を奪っているのはAIでもGoogleでもなく、SNS上のUGCそのものです。Google検索1位のサイトよりも、TikTokの上位に出てくるUGCの方が圧倒的な影響力を持つ時代、これを「検索のUGC化」と呼びます。
② 比較の基準としてのUGC

生活者は、企業が発信する「自画自賛」のメッセージをそのまま信じることはありません。「専門家が推奨しています」という言葉よりも、「実際に使っている第三者の生の声」を信頼します。
- 値段と効果が見合っているか、という妥当性。
- X(旧Twitter)などで語られる、忖度のない本音の「辛口レビュー」。
- Instagramのストーリーズで流れてくる友人の使用感。
企業は競合と比較されることを嫌がりますが、比較はすでにUGCの中で完結しています。重要なのは「比較されないこと」ではなく、「比較の場(プラットフォーム)に自社ブランドのUGCが適切に存在しているか」なのです。
③ 購買の後押しとしてのUGC

最後の一押しとなるのは、フォロワー数数万人のインフルエンサーよりも、実は「身近な友達の投稿」だったりします。 私自身、先日友人が「ここの焼肉屋のタン塩が美味しかった」とストーリーズにアップしているのを見て、実際に足を運びました。これこそが購買の決定打です。
TikTokのバズやリールの再生数も認知には貢献しますが、最終的な腹落ちを作るのは、友達レベルのリアルな口コミです。SNSは「拡散のインフラ」から「口コミのインフラ(意思決定の場所)」へと進化したのです。
プラットフォーム別・UGCの役割の違い|SNS UGC 口コミ レビュー

SNSごとに、蓄積されるUGCの性質は異なります。これらを使い分けることが、戦略的な運用に繋がります。
| プラットフォーム | UGCの役割 | 特徴 |
| TikTok | 最前線UGC | 検索の起点。初期興味を作り、トレンドを可視化する。 |
| 信用のUGC | 比較・検討の場。ビジュアルを伴う「憧れ」と「信頼」の担保。 | |
| X (旧Twitter) | 裏口コミの場 | 匿名性の高い本音。美容感度の高い層などが「真実」を求めて参照する。 |
企業がいくら説明を尽くしても、UGCという「信用の第三者証明」がなければ、現代の生活者には届きません。
企業がUGCを生み出す「3つのアクション」|SNS UGC 口コミ レビュー

UGCは勝手に生まれるのを待つものではなく、意図的に「運用」していくものです。
- ギフティングの活用 まずは商品を体験してもらう機会を作ること。弊社でも成果報酬型での実施もしていますが、まずは「数」の土台を作ることが不可欠です。
- 投稿したくなる「体験・キャンペーン」の設計 単に「投稿してください」と頼むのではなく、思わず誰かにシェアしたくなるようなブランド体験や、参加意欲の湧くキャンペーンを設計します。
- SNS担当者による「発掘とピックアップ」 担当者自らがUGCを探しに行き、公式アカウントで積極的に取り上げたりリアクションしたりします。これを見た他のユーザーが「自分の投稿も見てもらえるかも」「私も投稿しよう」というポジティブな連鎖を生みます。
特にTikTokにおいては、検索された際に「ズラッと何が出てくるか」という物量が重要になるため、ある程度の投稿数を戦略的に確保していく必要があります。
UGCは「ブランドの資産」である|SNS UGC 口コミ レビュー

UGCは一時的な「施策」ではありません。それは、ブランドの信用を中長期的に積み上げていくための「資産」です。
- 企業の投稿: 自発的な発信(宣伝)
- 広告: お金で買った露出
- UGC: 第三者による「信用」の証明
広告や自社発信だけでは、生活者の「1.5か所」の枠には入れません。 生活者が意思決定を行う「勝てる場所」を特定し、そこに質の高いコンテンツとUGCを集中させる。この戦略的な視点こそが、これからのSNS運用に求められる正解です。
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