SNSアカウント運用の適切な目標設計について
- SNSは長期的な関係を築くためのツール
- 消費者の行動パターンを理解しSNS運用の目的を見失わないこと
- 重要なのは長期的な視点を持つこと
- SNSアカウントを見ただけで即購入にはつながらない
- 最も重要な目標は『UGCの数』
- 質を高く保ち濃いユーザーにフォローしてもらうことが重要
- SNSの評価は定量的なものだけでなく定性的に見ることも重要
- UGCが発生するようなアカウント設計を目指そう
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👇本日はSNSのアカウント運用における目標設計についてお話しします。このトピックは非常に重要で、多くの人が疑問を抱いているテーマです。私たちも「どんな目標でアカウント運用すればいいですか?」という質問を頻繁に受けます。そこで、SNSアカウント運用のよくある誤りと、それを避けるための適切な目標設定について詳しく説明していきます。
SNSアカウント運用の誤りと目標設定の重要性
初心者が陥りやすい誤り
SNSアカウント運用の初心者がよく陥る誤りの一つに、『直接的な評価ばかりを見てしまう』という点があります。この誤りは特に自分のアカウントに対して盲目的になりやすいために起こります。SNS運用初心者は、自分の努力がすぐに結果に結びつくことを期待しがちで、直接的な成果だけを重視してしまいます。しかし、これは非常に危険な考え方です。
マーケティングプロでも陥る罠
実際、マーケティングのプロであってもこの罠に陥ることがあります。たとえば、消費者はこう動くだろう、アカウントを見に来たなら購入するだろうといった考えに基づき、Googleアナリティクス上のInstagramアカウントのURLからの直接的なコンバージョンデータを見てしまうことがよくあります。これは、数字として見える結果に囚われすぎているためです。
SNS運用の実際の目的
しかし、実際にはSNSアカウント運用は『今すぐ客』のためではなく、『これから客』のためのものであり、直接的な成果はほとんど期待できません。『今すぐ客』とは、今すぐに行動を起こす顧客のことであり、SNSの投稿を見て即座に購入や問い合わせを行う人たちのことです。一方、『これから客』は、今すぐには行動を起こさないが、将来的に購入や問い合わせを行う可能性がある人たちを指します。
直接的な成果の限界
SNS運用において、直接的な成果に過度な期待を抱くことは非常に危険です。なぜなら、SNSは長期的な関係を築くためのツールであり、すぐに結果が出ることを期待するのは現実的ではないからです。SNS上での活動は、ブランドの認知度を高め、信頼を築くためのものであり、その過程で直接的な成果が見えにくいことが多いです。
消費者の行動パターン
消費者はSNSの投稿を見た後、すぐに購入や問い合わせを行うことは少なく、多くの場合、情報を収集し、比較検討する時間を取ります。例えば、Instagramの投稿を見て興味を持った消費者は、そのブランドや商品についてさらに詳しく調べるために、他のSNSやウェブサイト、レビューサイトなどを訪れることが多いです。このような消費者の行動パターンを理解し、SNS運用の目的を見失わないことが重要です。
長期的な視点の重要性
SNSアカウント運用において重要なのは、長期的な視点を持つことです。短期的な成果に囚われず、ブランドの認知度や信頼性を築くための活動を継続することが必要です。直接的なコンバージョンだけを見て運用を判断するのではなく、フォロワーとのエンゲージメントやブランドへの関心の高まりを評価することが求められます。
SNSの利用者の行動パターン
ユーザーはアカウントを見て「このブランドいいな」と思った後、次のような行動を取ります。
- タグ付け欄を見たり、他のユーザーがどのようにそのブランドを利用しているのかを調べる。
- InstagramやX、TikTokなどのSNSを離脱して、他のプラットフォームに移行する。
- Googleで検索をし、レビューサイトや比較サイトを見る。
例えば、コスメティック製品なら『@コスメ』をチェックするでしょう。こうして比較検討を行い、最終的に購入に至ります。特に単価が高い商品ほど、購入に至るまでのリードタイムが長くなります。そのため、SNSアカウントを見ただけで即購入にはつながりません。
各プラットフォームごとの目標設定
SNSアカウントの目標を設定する際には、プラットフォームごとに異なる目標を設けることが重要です。例えば、Instagram、X、TikTokなどの各プラットフォームでは、それぞれの特性に応じた目標を設定します。
UGCの重要性
私が考える最も重要な目標は、『UGCの数』です。UGCとはユーザー生成コンテンツのことで、ブランドのリーチ数やフォロワー数を追うのも良いですが、それらはあくまでも中間KPI(KPI:最終目標)に過ぎません。メインのKPIとしては適していません。フォロワー数をメインのKPIにすると、プレゼントキャンペーンなどでフォロワーを増やすための施策に固執してしまいがちですが、その結果増えたフォロワーがブランドのファンになるとは限りません。
質の高いフォロワーを獲得する
現在のSNSのアルゴリズムは量よりも質を重視しています。1万人のフォロワーがいても「なんとなくこのブランドを知っている」程度の興味しかない場合と、100人のフォロワーしかいなくても熱狂的なファンがいる場合とでは、後者の方がInstagramに評価されます。質を高く保ち、濃いユーザーにフォローしてもらうことが重要です。
定量的・定性的な評価方法
UGCの数が増えると、指名検索が増え、結果的に売上げにつながります。これが一つの大きな指標です。また、SNS以外での指名検索数も一つの指標となります。その上で、SNSの評価は定量的なものだけでなく、定性的に見ることも重要です。「このブランドをどこで知りましたか」という調査を年に1~2回行うと良いでしょう。
メディアリーチとブランドリーチ
私たちは『メディアリーチ』と『ブランドリーチ』という二つの概念を使っています。
メディアリーチとは
例えば、化粧品を販売している会社が『ニキビができづらくなるためにする7つのこと』という投稿をしたとします。この投稿には自社の商品情報は含まれていませんが、情報としてのメディアリーチを獲得します。これで10万リーチを獲得したとします。
ブランドリーチとは
一方で、『自社商品のおすすめの使い方』という投稿では1000リーチしか取れなかったとします。この二つを比較すると、ブランドリーチである1000リーチの方が圧倒的に価値があります。メディアの情報で10万リーチを獲得しても、それはただの情報に過ぎないため、その数に感動しても意味がありません。ブランドや企業は、メディアリーチを追うのではなく、ブランドリーチを広げ、ブランドの世界観に共感してもらうことで、『このブランドいいな』と商品を購入した後にUGCが発生するようなアカウント設計を目指しましょう。
まとめ
SNSの目標設計は、単にフォロワー数や直接的なコンバージョン数を追うだけではなく、より質の高いフォロワーを獲得し、UGCの増加を目指すことが重要です。各プラットフォームごとの特性を理解し、それに応じた目標を設定することで、ブランドのリーチを最大限に広げることができます。
最後に、定性的な評価も欠かさず行い、SNS運用の効果を総合的に見ていくことが求められます。このアプローチによって、ブランドの認知度やファンの増加、最終的な売上向上を実現することができるでしょう。
プロフィール
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」