Instagramの最高責任者がアルゴリズムや今後のインスタの動向を解説。【英語動画翻訳】
- アダム・モッセーリ氏は2008年にFacebook入社、2018年からInstagram責任者となった
- Instagramは動画コンテンツを強化し、ユーザーの参加体験を提供している
- Instagramのアルゴリズムはユーザーの関心を反映し、リーチを重視している
- 収益化はクリエイターにとって重要。各プラットフォームは新しいモデルを模索中である
- Instagramは進化に遅れ、文化的関連性を失うリスクがあるとモッセーリ氏は懸念している
読了目安:約分
今回は、Instagramの最高責任者であるアダム・モッセーリ(Adam Mosseri)氏の対談動画を解説します。Instagramの最新アルゴリズムや今後の動向が気になる方は、ぜひ最後までお読みください。元動画は40分と長尺ですが、重要なポイントをかいつまんで説明します。
Instagramの最高責任者であるアダム・モッセーリ氏は、2008年にFacebookにプロダクトデザイナーとして入社し、2018年にInstagramの責任者に就任しました。現在の業務は、製品の立案者との会議や新機能の発表など、多岐にわたります。一介のプロダクトデザイナーからプロダクトマネージャーを経てInstagramの責任者になった同氏は、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏との信頼関係を築くため、必要な要素を説明したり、ザッカーバーグ氏からの高い期待値や想定しうるフィードバックを受け入れながら、自身が大切であると考えることをしっかりと主張しつつ、互いに理解し合うための議論を重ねていると述べています。
動画への積極参加を提供
現在のInstagramにおいて、動画は重要な役割を果たしており、創業当初から大きな変革を遂げています。ユーザーは写真を閲覧するよりも動画を視聴する時間が増えていますが、InstagramがYouTubeやTikTokと異なる点は、動画を閲覧する際にユーザーに積極的に参加する体験を提供していることです。
Instagramの変化と将来
モッセーリ氏は、Instagramはユーザーのニーズに応じて変化し続ける必要があるが、変化しすぎるとユーザーに拒否される可能性もあると述べました。また、彼はInstagramが過去にこだわらず、将来に向けて進化していく必要があると考えているとも言っています。
投稿で多くのリーチを獲得する方法
Instagram独自の特徴は、気になった動画を同じプラットフォーム内でDMを利用して友人や知人と共有できる点です。短編動画に焦点を当てていることで、ユーザーは簡単にコンテンツを発見でき、友人や知人との関係を深める相乗効果が生まれています。Instagramのリール動画の成功は、その動画がどれだけシェアされたかに大きく左右され、ユーザーが友人や知人と動画を共有したいと考えていることを示しています。
Instagramのアルゴリズムはブラックボックスではありません。ユーザーは送信数やリーチなどの指標を確認することで、自分の動画のパフォーマンスを評価できます。Instagramでは、動画がユーザー間で共有されることが重要視されており、送信数はリーチの指標とされています。リーチやインプレッションごとの送信数が重要であり、送信数の多い動画はより多くのユーザーに表示される可能性が高くなります。
コンテンツの発見と推薦
視聴時間やリールに費やす時間も、送信数ほどではないものの重視されます。つまり、滞在時間の長さが重要だということです。
もう1つ注目すべきは、リーチのうち、フォロワーとフォロワー以外の割合で、フォロワーのリーチはフォロワー以外の割合よりもはるかに安定しているべきであると考えられています。つまり、フォロワーはリーチしやすいということです。Instagramのアルゴリズムは、ユーザーがフォローしているアカウントのコンテンツを優先的に表示しますが、同時に検索タブやリールタブなどの機能を通じて、ユーザーが新しいコンテンツやアカウントを発見するのを支援することも目指しています。Instagramでは、ユーザーがフォローしていないコンテンツが表示されることがあり、これは「未接続コンテンツ」と呼ばれ、ユーザーが新しい興味や関心を発見する機会となります。リールタブや発見タブの検索機能において、この未接続コンテンツによって、フォロワー以外のアカウントがコンテンツを見ているかどうかも重視されています。
Instagramの推薦システム、いわゆるレコメンドシステムは、ユーザーのニッチな興味や関心を反映するように設計されています。Instagramはアプリの動作を統一し、すべてのレコメンド画面でユーザーが興味のあるコンテンツを見られるようにインフラの統合に取り組んでいます。このような取り組みは、Instagram自体の思想「好きと欲しいを作る場所」のあらわれと言えるでしょう。
フォロワー数の重要性
フォロワー数が多いことは、フォロワーにリーチする可能性を高めるため非常に重要ですが、最近ではユーザーがシステムに推奨されたコンテンツを見る割合が増えており、5年前と比較してその重要度は低下しています。たとえフォロワー数が多くても、リーチが安定しない可能性があるのです。この推奨システムは全体的なエンゲージメントを高め、ユーザーを興味のあるコンテンツに接続することでメリットを提供しますが、これにより平均リーチは向上する一方で、個々のクリエイターのリーチが不安定になることが懸念されています。つまり、多くのリーチを獲得していたクリエイターのリーチが減少し、新たにInstagramを始めたクリエイターを含む全体の平均リーチが向上する状況が生まれています。
また、ストーリーズやDMでの共有など、オーガニックな手段を通じて一部のコンテンツが拡散される可能性があります。投稿の成功は、その投稿がストーリーズでどれだけ早くシェアされるかに大きく左右され、特に最初の1時間以内に急速にシェアされると、リーチが増加することが多いです。このように設計することで、コンテンツが広がる可能性が高まります。
フォロワーではない「未接続のリーチ」は、ストーリーズやDMでコンテンツを共有することで得られ、検索タブやリールタブを超えた追加のインプレッションや再生回数を提供します。アルゴリズムは優良なパートナーシップなど、投稿の成功に貢献するさまざまな要因を考慮しますが、オーガニックコンテンツでも高いエンゲージメントとリーチを達成することが可能です。
アルゴリズムの深堀り
人間の感情を刺激するコンテンツは共有される可能性が高くなります。Instagramは、フィードからフィードへのリシェアをサポートしておらず、フィードからストーリーズへのシェアは一度しかできません。そのため、多くの共有コンテンツはDMやストーリーズを介して行われる傾向があります。コンテンツが個人的であればあるほど共有されやすく、企業などのコンテンツはシェアされにくいのが現実です。
対照的に、FacebookやXのようにパブリックなリシェアを許可しているプラットフォームでは、大衆に受け入れられるコンテンツが優先される傾向があります。InstagramのDMを通じて共有されるコンテンツは、サッカーのハイライトやダークなスタンダップコメディなど、一般に公開されにくい個人的でニッチなものが多いです。
このようなアプローチにより、Instagramのコンテンツのトーンは平均的によりポジティブなものにシフトしています。プラットフォームの大規模なユーザーベースにも関わらず、ネガティブなエネルギーは減少し、アルゴリズムは大衆に向けた叫びのようなコンテンツではなく、個人同士の会話で共有されるコンテンツを優先します。つまり、このアルゴリズムはあくまで「個」と「個」を優先していることが分かります。
InstagramリールvsTikTok
Instagramの短編ビデオの競争上の優位性は、創作の自由と幅広いツールセットにあります。Instagramは世界的に大きなプラットフォームであり、より多くのリーチを提供しています。TikTokも短編ビデオの領域で成長を続けていますが、Instagramはその性能において優れているため、すぐに追いつくことができると考えています。
Instagramをミュートで視聴する人の割合
Instagramでは、ビデオ視聴の約半分がミュートで行われています。ミュートで視聴する場合、視聴者がコンテンツを理解するためにはキャプションが欠かせません。また、短編ビデオのパッケージングにおいては、冒頭の数秒、さらには視覚的なフックが非常に重要です。
クリエイターの満足度
クリエイターは、「リーチ」「安全性」「収益」「ファンとの繋がり」「他のクリエイターとの繋がり」を重視しています。リーチはクリエイターにとって重要ですが、安定したリーチを保証することは難しいです。安全性はクリエイターが自分自身を表現し、共感できる環境を作るために重要です。収益はクリエイターにとって重要ですが、小規模なクリエイターにとって収益化は難しいものがあります。
クリエイターの収益化と収益シェア
Instagramにおけるクリエイターの収益化は重要な要素ですが、すべてのクリエイターにとって同じ重要性を持つわけではありません。Instagramではクリエイターを以下の3つの層に分けています。
- エマージングクリエイター
- プロフェッショナルクリエイター
- トップティアクリエイター
クリエイターの収益化は広告ビジネスの一環として行われており、「ボーナス制度」を導入することで再生回数に応じたボーナスが支払われます。しかし、短編動画においては、効果的な収益化が難しいのが現状です。
YouTubeのショートビデオの収益シェアモデルは、Instagramのクリエイターにとって有益な参考となり、収益化を促進するための良いモデルと言えます。Instagramは、このYouTubeのモデルを参考にしつつ、クリエイターの収益化プログラムを実施しています。このように、Instagramのビジネスモデルはクリエイターの収益化を促進するために重要な役割を果たしています。
短編動画の広告収益帰属
短編の縦型動画は、クリエイターにとって高い利益率を誇るコンテンツであり、広告費も短編動画へとシフトしています。広告主の目的に応じて、適切な動画の尺は異なりますが、ブランドコンテンツの測定が不十分なため、大規模なクリエイターには過剰な報酬が支払われ、小規模なクリエイターは過小評価されるという市場の歪みが生じています。
適切な測定が行われれば、広告費は大規模なクリエイターから、小規模でニッチなクリエイターへと移行する可能性があります。このことから、フォロワー数はもはや重要な指標ではないことが明らかです。
パートナー広告について
パートナー広告とは、クリエイターが広告主と提携してコンテンツを制作し、そのコンテンツを広告として活用する仕組みです。広告主はクリエイターが作成したコンテンツを用いることで、フォロワー以外のオーディエンスにも広告を配信でき、その効果を測定することで成果を確認することが可能です。
小規模なクリエイターが広告主と連携するためには、自身のオーディエンスの特徴と価値を明確にする必要があります。クリエイターは、自分のフォロワーが広告主にとってどのような価値を持つかを示さなければなりません。例えば、数千人のフォロワーしか持たないクリエイターであっても、そのフォロワーのニーズや興味が特定の分野に集中している場合、広告主にとって大きな価値を提供できる可能性があります。
クリエイターとInstagramクリエイター
Instagramクリエイターとして認識されることは必ずしも重要ではありませんが、クリエイターがInstagramに対して忠誠心を持つことは意義があります。小規模クリエイターを支援することで、Instagramに忠誠心を抱くクリエイターを育成できるのです。Instagramはクリエイターにとって最大のプラットフォームであり、平均的な評価は高いものの、特定の国では競合他社の評価が上回っていることもあります。そのため、多くのクリエイターの協力が必要です。
オリジナリティ保護のためのAIの使用
Instagramはオリジナリティを保護するためにAIを活用し、オリジナルコンテンツを制作したクリエイターに対して価値を付与することを目指しています。コンテンツを集めた人ではなく、オリジナルコンテンツを作成した人に価値を与えることを目指しているのです。オリジナリティを保護するためにコンテンツの分類を改善し、オリジナルコンテンツを優先する方針を採用しています。
オリジナリティを定義するために、Instagramは「オリジナル」「ミックスオリジナル」「非オリジナル」の3つのカテゴリを設けています。「オリジナル」は完全に独自のコンテンツ、「ミックスオリジナル」はオリジナルに他の要素を加えたもの、「非オリジナル」はリポストなど、完全にオリジナルでないコンテンツを指します。
また、InstagramではAIを使用して生成されたコンテンツに「Made with AI」というラベルを付ける取り組みを行っています。これはユーザーが情報に基づいた判断を下せるようにするための透明性を確保する目的です。ただし、すべてのコンテンツを正確に識別することは不可能であり、AIを利用して生成されたコンテンツがラベルラベル付けされない場合もあります。逆に、AIで作成されていないコンテンツがAIとして誤認されることも増えています。
TikTokとInstagramは異なるもの
TikTokが禁止された場合、InstagramやYouTubeなど他のプラットフォームでの注目が高まる可能性がありますが、これは必ずしもInstagramがその空間を完全に埋めることを意味するわけではありません。むしろ、ユーザーが他の利用可能なプラットフォームに流れる可能性もあるため、インターネットがさらに断片化されることが懸念されます。
次世代のソーシャルメディアの流れ
今後、インターネットはますます断片化が進み、TikTokやSnapchatなどの多様なソーシャルメディアプラットフォームが登場し、進化することでオンラインの風景がより複雑化する可能性があります。ソーシャルメディアにおける現在のパラダイムシフト(新たな価値観の誕生)は、少なくとも今後5年間は続くと予想されており、コンテンツの共有はフィードベースからメッセージングベースのフォーマットへと移行しています。このシフトはすでにSnapchatなどのプラットフォームで明らかになっており、ほとんどの共有がストーリーズではなくメッセージを通じて行われています。また、Instagramでもフィードよりもメッセージやストーリーズを介して、より多くの写真や動画が共有されています。
ビデオコンテンツはまだ完全には浸透していませんが、モバイルビデオは主に短編ビデオによって推進され、テレビの視聴シェアを奪う可能性が高いです。
新たなテクノロジーの可能性
5年ごとに、人々のコンテンツ共有方法には大きな変化が見られ、新しいフォーマットやチャネルが登場する可能性があります。次のシフトは生成AIによって促進されるかもしれません。さらに、デバイスのスピーカーやマイクといった機能が重要な役割を果たし、スマートグラス(眼鏡型端末)などの新技術の台頭によって、人々のソーシャルメディアや相互交流の方法が変わるでしょう。その結果、ビデオ共有やメッセージングといった機能が一層重要になる可能性があります。Meta社のスマートグラスは、将来的にiPhoneに取って代わる可能性を秘めており、「ARグラス」はユーザーが声で操作できるインターフェースを実現します。
Instagramの将来の最大の失敗
Instagramが将来的に犯す可能性がある最大の誤りは、5年後に文化的関連性を失うことであり、その主な要因はプラットフォームが進化する世界に追いつくのが遅すぎることです。プラットフォームが成長するにつれて、より多くの監視やリスク軽減機能に直面し、その結果、意思決定のスピードが低下する恐れがあります。また、規制の強化や短期的な収益への焦点も、プラットフォームの運営ペースに影響を与える可能性があります。
テクノロジーのイノベーションが加速する中で、Instagramが競争に遅れを取るリスクは高まっています。この誤りがもたらす結果は予測が難しいものの、世界から取り残される可能性があることは否定できません。Instagramの最高責任者であるアダム・モッセーリ氏は、このリスクを認識しており、変化する環境に適応する機能や能力について懸念を抱いています。
Instagramのアルゴリズムや思想が浮かび上がっている対談でした。今後もこういった動画を紹介していきますので、ご期待ください。
【実績】
【プロフィール】
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」