ECモールへの出店のメリット/デメリット
今、ECモールに取り組むべき理由を解説!
- 自社ECでDtoCの販売が厳しくなってきたという現実
- 「楽天市場」「Amazon」でECモール全体の流通額の約7割
- 消費者のほどんどはモール起因で商品を買う
- モールは資産性が高い
- 最初はAmazonか楽天市場のどちらかに出店すればOK
- 特にDtoCの企業ではAmazonがおススメ
- 中長期的に見るとモール出店した方が有益
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今回はECモール運営のプロフェッショナル、Wacworks代表の舟瀬さんに今なぜECモールが熱いのか、その理由についてお話を伺います。ECモールへの出店を悩んでいる企業の方はぜひお読みください。
富田:本日はWacworks代表の舟瀬さんにお越しいただきました。はじめに、簡単な自己紹介をお願いいたします。
舟瀬:株式会社WacworksはECモールに特化した支援をしています。いわゆるECモールの運用代行です。その他、コンサルティングなどECモールで売上げを上げるためには「どうすれば良いんだっけ?」というところの戦略の部分から施策の実行支援まで幅広くトータルで行う会社をやっています。
富田:実は弊社もECモールの運営などはWacworksさんにお願いしています。今回は、ECモールに出店すべき理由についてお話を伺いたいと思います。
ECモールが今熱い! その理由とは
富田:今、ECモールが熱い!と言われていますが、弊社でもDtoC系クライアントが「DtoCの売上げがきつくなってきているけれど、モールでの売上げは伸びている」といった話を結構いただくことが多いのですが、ECモールが熱い理由とはなんなのかを教えてください。
舟瀬:結論としては、ECモールが熱いというよりも、自社ECでDtoCの販売が厳しくなってきたということだと私は考えています。
EC市場全体が成長していますが、新たに出店する店舗数も急増しています。この結果、各店舗が様々なマーケティング施策を行う中で、お客様は「どの商品を選べば良いのか」と迷ってしまうことが多くなっています。
自社の商品を選んでもらうために、例えばクリック課金型のリスティング広告を利用すると、その分CPC(クリック単価)が上がってきます。また、お客様が迷うことでCVR(コンバージョン率)は下がってしまいます。つまり、お客様がどの商品を選ぶべきか悩むことで、結果としてマーケティングコストが上昇してしまうのです。
その一方で、モールが注目される理由には大きく2つあると思っています。
①結局みんなモールで買う
舟瀬:1つ目が、「結局みんなモールで買うよね」というところです。日本のEC市場規模は何10兆円もあるのですが、そのうち2大モールと呼ばれる「楽天市場」と「Amazon」で、ECモール全体の流通額の約7割を占めています。これはかなりすごいことですよね。
正直なところ、ほとんどの消費者が何か商品を買いたいという時に「楽天で探してみよう」「 Amazonで探してみよう」という行動を取ります。商品を自社ECサイトで買うのではなく、モールでポイントがつくから、明日届くからという理由で買うという購買傾向があるため、そもそもモールにコンバージョン(CVR)が乗りやすいのです。
②資産性が高い
舟瀬:2つ目として、私がもっともモールが熱い理由だと考えているのは、資産性が結構高いというところです。自社ECは広告費を使います。リピートするような商品であればLTVと捉えることができますが、基本的には1回買ってしまえば終わりといったケースもあると思います。
モールの場合は、商品が1点売れると、モール内でのSEOが向上します。例えば、ワイヤレスイヤホンを販売する場合、モールでどんどん買われていくごとに、ワイヤレスイヤホンというキーワードで検索順位が上がってきます。そのおかげで、本来リーチできなかった層に対して一般キーワードというカテゴライズでリーチすることができるというメリットがあります。
総じて、SEOを見ると、資産性がかなり高いと思っています。そのため、ECモールが熱いと結論付けることができると個人的には考えます。
富田:今、舟瀬さんのお話を聞いていて気づきました。確かに私も最近、メーカーやブランドの自社ECで買い物したことがあるかな?と思い返してみると、ほとんどありません。いつも、楽天市場かAmazonで買っていると改めて思いました。
また、先ほどのお話の中で今モールが熱い理由をいただいたんですけれど、例えばDtoCの企業など自社ECでの売上がどんどん下がってきて、きついという状況下で、ECモールに出店すべき理由をもう少し掘り下げてお伺いできますか?
舟瀬:富田さんもおしゃった通り、今はモールで買う人が圧倒的に多くて、私もほとんどの買い物はAmazonです。結局、消費者のほどんどはモール起因で商品を買うという事実があるので、そこがモールに出店すべき一番大きな理由です。
私たちが運用支援している企業の中に、それまで自社ECだけで月商約3000万円の鞄屋さんがありました。モール出店したいと弊社にご相談いただき、2年ほどご支援させていただきましたが、結果として、自社ECは3000万円程度をキープし、その他に楽天市場・Yahoo・Amazonの3つで3000万円ほど上乗せして、トータルで月商6000万円を達成しました。
自社ECで購入される人も一定数いると思いますが、こうした事例を見ると、楽天市場やAmazonのように何かしらのメリットがあるモールでの購入者が非常に多いことが分かるので、ユーザーライクにしていくためにもモールに出店すべきだと思います。
富田:モールを始めると、本来自社ECで購入するお客さんまでモールで商品を買ってしまうのではないかという心配もあると思います。モールの売上げが伸びていっても、自社ECでの売上げ3000万円をそのままキープできたという先ほどの鞄屋さんの事例がありますが、モールをやっても自社ECでの売上げが下がらなかった理由を教えてください。
舟瀬:モールの新規をたくさん取れたことによって、売上の総量は上がりました。ただ支援していた2年間にECの市場はどんどん伸びています。結果としては自社ECの売上げが3000万円から変動していないので、一見すると売上げは横ばいなんですけれど、市場の成長に対して見ると、実は売上げは上がっていなかったのです。
自社ECで買っていた人が楽天市場やYahooなどに流出してしまうことはどうしても防げません。ただ、モールの方で新規が取れた結果、売上の総量は上がっていったので、戦略としては大成功です。
モール手数料など諸々ありますが、利益を追えているかどうかという点においても、しっかりと伸ばせたということで運用としてはうまくいったと捉えています。
富田:モールは手数料があるから、やっぱり自社ECで売りたいという企業がかなり多いんですが、自社ECの利益をキープしながら、モールでの売上げを伸ばして行けたのはすごいですね。
どのモールからECモールをはじめるべきか
富田:どういった商材を出すかにもよりますが、ECモールをやる上で、どのモールからやるべきかを教えてください。
舟瀬:結論としては、商品次第だと思います。私たちが運営させていただく場合には、自分たちが扱う商品がそもそもモールで売れるのかというところからしっかり見た上で選定していきます。よくある方法として、例えばAmazonではレビュー数を見たり、セラースプライトというツールで他社の商品が大体どのぐらい売れているのかというところを見た上で、Amazonに出店すべきかどうかを決めています。
楽天市場でも同様にレビューや独自に入手した他社の売上げ情報などを考慮して、出店するかどうかを決めています。
たいていの場合、Amazonか楽天市場のどちらかに出店すればOKだと思います。特にDtoCの企業ではAmazonがおススメです。理由としては、DtoCにはいろいろな商品がありますが、リピート系の商品が多いからです。Amazonの定期便というシステムは、自社ECでもやっている定期通販のようなやり方ができます。そのシステムが買い物しやすいという点と、楽天市場やYahooではまだAmazonの定期便のようなシステムが整っておらず、複雑で買いにくいという点があります。DtoCでサプリメントやプロテインのような商品を扱っている企業はまず、Amazonからやっていくというケースが多いですね。
富田:ECモールをやるとしたら、まずは商品次第だということですね。どのモールを選ぶべきかという調査からやっていただけるというのはすごく心強いと思います。
ECモールのメリットとデメリット
富田:最後に、ECモールはどういった点が良くて、どういった点が悪いというところがあれば、お聞かせください。
舟瀬:やっぱり1番大きなメリットとしては、資産性が高いというところです。カートシステムとして開けておいて「楽天で買う人は買うよね」というやり方もちろんいいと思うんですが、しかし、モール内でしっかりと売上を伸ばすためには、LP(ランディングページ)を作成したり、モール内の広告を活用することが大切です。そうすることによって、今まで指名検索でしか取れなかったモールユーザーから先ほどお話ししたワイヤレスイヤホンの事例のように、一般検索が取れるようになることが大きいと思います。
特にDtoCをやっている企業は、SNSを活用をしているケースが多いようです。私たちはモールのことを『自販機』と呼んだりしているんですけれど、「ワイヤレスイヤホン」というキーワードで検索すると商品がたくさん出てきます。そうすると、やっぱりお客さんも結構迷うんです。価格やサムネイルを見比べて、どれがいいかと考える中で、一番重要なのは「あ、これ前に見たことがあるかも」という既視感です。一度どこかでその商品について情報を得ていると、その商品が選ばれる可能性が高くなるので、そこは大きなメリットだと言えます。
逆にデメリットとして、モールに売上げを食われてしまう(奪われてしまう)というところは否めません。どの企業も自社ECを運営していて、さらにモール出店するとなると、モールに売上げを食われてしまうという感覚があるので、そこは正直なところ、なかなか難しいところです。
これは余談ですが、私たちのまわりでDtoCをやってきてた企業が最近、その良さをまるっと持って楽天などに出店してくるケースがあります。結構な予算を投じてモールに注力している企業が多いので、利益がなかなか得られない部分もありますが、モールに出店するという資産性の高いやり方をしていかなければ、勝ち残れないのではないかと思います。
このように、デメリットとして利益がなかなか出にくい点を差し引いても、中長期的に見ると、モール出店した方が有益だと言えます。
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プロフィール
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」