【ECモール】4輪ECハックを武内製薬の小倉代表が徹底解説!
- 武内製薬はEC、OEM、卸、SNSを組み合わせた「四輪戦略」を展開しており、それが強みとなっている
- 韓国コスメ市場での成功は、日本市場のニーズを深く理解し、ブランドと密に連携することによって実現されている
- Amazonや楽天、Qoo10などのECモールとSNSを活用して、商品販売を拡大し、効果を数値で可視化している
- SNS広報室を立ち上げ、インフルエンサーとのコラボやSNS投稿で、EC売上や卸の販売促進に貢献している
- 自社工場や強い協力工場を活用し、若いメンバーによるスピード感とコストメリットを提供するOEMサービスを強みとしている
- 若い組織として、スピード感と成長意欲を持った人材を求めており、採用活動を積極的に行っている
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今回は、弊社とも連携していただいております武内製薬の小倉さんにお越しいただきました。
代表の自己紹介
富田:簡単に自己紹介をお願いします。
小倉:武内製薬株式会社の代表を務めております、小倉と申します。経歴としては、新卒で楽天に入社後、外資系のコンサルティング会社に転職しました。それぞれで3年ずつ働いた後、武内製薬に役員として入社し、約半年後に代表に就任しました。昨年の9月に代表に就任してから1年が経ち、現在は2年目に突入しています。
富田:代表に就任された1年間はいかがでしたか?
小倉:実は武内製薬には5年ほど前から外部のコンサルタントや社外取締役として関わっていたため、状況はよく把握していました。そのため、役員として入社した際も、社員とのコミュニケーションや、誰がどの人であるかの名前も把握していました。役員に就任した時点で、私が入社する約半年ほど前に親会社がつくなど、会社の状況に変化がありました。また、グループ会社が増えている時期でもあり、その対応に取り組んでいました。
代表に就任してからは、改めてフェーズが変わるタイミングで、当時まだ「0→1」を得意とする創業者の金光氏がいましたが、私が担当すべきタイミングは「1→100」にしていく時期でした。そこで、社内の状況をしっかり確認し、SCM(サプライチェーンマネジメント)の裏方的な部分から、EC、OEM、卸売りなどの各状況を把握しました。そして、全体としてどのような対応が求められるのかを考え始めました。
富田:現在はかなり忙しい時期なのでしょうか?
小倉:1年が経過し、忙しさは少し落ち着いてきました。社長に就任してからの半年間はまさに「クレイジージャーニー」でした(笑)。
武内製薬って、どんな会社?
富田:武内製薬さんは、どんなことをしている会社なのでしょうか?
小倉:武内製薬には「EC」「卸」「OEM」の3つの事業部があります。基本的には、自社商品を販売することが主な業務で、EC事業部はオンラインでの販売を担当し、卸事業部はオフラインでの販売を担当しています。また、OEM事業部では他社の製品を製造させていただいています。
富田:弊社も自社商品を販売する際に、OEMでお世話になりました。現在、どの部署が一番売上げが高いのでしょうか?
小倉:やはりEC事業部が最も売上が高いです。元々ECを中心に立ち上げた会社ですので、売上げの比率は6対2対2ぐらいですね。
富田:ECの比率はまだ高いですが、最近では卸事業が伸びていると聞きました。
小倉:そうですね、卸事業もありがたいことに伸びています。卸での売上げの中には自社製品も含まれていますが、それ以上に、韓国コスメの総販売代理店を2社担当していることが大きな要因です。その部分が順調に推移しています。
富田:卸は、どのような場所で販売されていますか?
小倉:ドラッグストアをはじめ、ドン・キホーテやLOFTなどのバラエティショップでも弊社の商品を取り扱っていただいています。問屋さんを通じて、全国のドラッグストアやバラエティショップに商品を展開しています。
富田:韓国の商品は、製品自体のクオリティやパッケージの可愛さなど、さまざまな売れる要素がありますが、それに合わせたマーケティング対策はされていますか?
小倉:マーケティング施策というよりは、ブランド側との関係を深めることを重視しています。弊社には韓国人の社員がいて、日本市場でどのような商品が受け入れられるかを非常に良く理解しています。商品開発の段階からブランドと密に連携し、日本で受け入れられる色合いやクオリティをアドバイスしていることが、売れる大きな要因の一つです。
また、SNSやPR系の雑誌、リアルイベントなどを活用し、ブランドにもマーケティング費用を提供してもらいながら、お互いに協力してしっかりとしたイベントを作り上げています。
武内製薬の強み
富田:自社でECやOEM機能を持ち、両輪で展開していくことがかなりの強みだと思います。似たように両輪でやっている会社はあまりない気がします。
小倉:まさにそうですね。最近「自社の強みは何だろう?」と改めて考え直したとき、両輪というよりも、むしろ「四輪」ぐらいあると感じています。ECやOEMはもちろん、卸で流通開拓の経路を持つD2Cブランドはあまり多くなく、そういった点でも強みを持っています。また、SNSを強化しているブランドは、それぞれ10万人ほどのフォロワーを抱えており、これらの四つの要素を回せている点が強みだと思っています。さらに、商品開発が社内でしっかりと行われているのも大きなポイントです。
その一方で、まだそれぞれの分野でやり切れていない部分も強く感じています。
主軸はずっとECモール
富田:コロナウイルスの影響でECが伸び、D2C全体が厳しい状況にある中、各社がECモールに力を入れ始めました。しかし、ECモールに進出したものの再び厳しくなった企業がリアル店舗に戻ってくるという流れも見られます。結果として、O2O(オンライントゥオフライン)のしっかりとした売り場を持ち、ECも強化している企業が伸びているという印象があります。そういった意味でも、四輪の体制で対応できている貴社の強みは非常に大きいと思います。
小倉:確かに、各分野でまだやり切れていない部分もありますが、四輪体制があることは最近、強みだと実感しています。
富田:武内製薬さんの取り組みや強みをお聞きしました。ここからはディスカッションに入らせていただきます。
富田:元々、小倉さんは楽天市場にいらっしゃったということですが、武内製薬さんのECモールでの販売売上は大きいのでしょうか?
小倉:はい、そうです。一番初めに取り組んだのは、「ブラジリアンワックス」という脱毛ワックスの商品で、それが私たちの事業の始まりでした。当時、ネットでの販売が最も適している商材だったため、約10年前からECを強化していきました。商品開発の戦略にも影響してきますが、現在、私たちの売上の約95%はECモールでの販売です。自社販売は1割にも満たない程度で、主軸はECモールでの販売です。
Qoo10には女性客が付いている
富田:ECモール自体もどんどん伸びていますし、新たに「Qoo10」などが日本に進出していますが、直近のECモールの状況について、どのように感じていますか?
小倉:Qoo10は「韓国コスメモール」と言っても過言ではなく、韓国コスメがたくさん売られています。特に「メガ割」のタイミングは非常に面白いです。正直、最初はQoo10にあまり期待していなかったのですが、弊社は四輪の強みがあるものの、横の連携がうまく取れていなかった時期に、韓国コスメがオフラインで売れ始めたことをきっかけに、Qoo10のメガ割を使って試しに売ってみました。すると、すぐに売上げが跳ね上がり、「こんなにもQoo10に女性のユーザーが集まっているんだ!」と実感しました。今後は、スルーできないモールの1つだと捉えています。
ただ、(日本では)ECモールの2強と言えばAmazonと楽天ですので、それぞれが今後どうなっていくのかには非常に関心があります。
富田:以前、Nintさんという、モール内での情報を提供する会社の方とディスカッションをしたのですが、Amazonと楽天は各ジャンルで成長が頭打ちになっているものの、顧客単価が上がっているため、まだ成長が続いていると話していました。確かに、モールによっては、何かが出ると別の何かが落ちるという状況がありますよね。貴社もプロテインを販売されていますが、プロテイン市場は競争が激しいと感じます。こうした競争が激しい中で、ECモールで販売している中で上位を取る感触を得ているのか、それとも四輪などを組み合わせることでうまくいくと感じていらっしゃるのでしょうか?
Amazonは今後も伸びていきそう
小倉:私の主観としては、Amazonは今後も伸びていくのではないかと考えています。これまで、Amazonでは大きなセールを年に2回くらいしか開催していませんでした。一方、楽天では大きなセールが毎年3の倍数月に開催されたり、「マラソン」と呼ばれるセールが毎月行われています。Amazonは巨大なセールイベントしか行っていなかったため、流通規模が限られていましたが、10月には新たに大きなセールが追加され、その結果流通規模が拡大しました。成長余地という観点から見ると、Amazonにはまだまだ伸びしろがあると感じています。
一方で、楽天ではポイント改悪に関する話があり、消費者目線で見ると、最近では楽天からAmazonに顧客が移行しているという話をよく耳にします。D2Cブランドでも、購入のしやすさを求めて、自社ブランドの商品をAmazonで購入できるようにしている例が増えてきています。そのため、Amazonは今後さらに伸びやすい状況にあり、実際にAmazon自体が伸びているため、様々な取り組みがしやすくなっています。
小倉:楽天とAmazonの違いは様々ありますが、一番大きな違いは、新商品がどれくらい売れるかを事前に予測できるかどうかです。ここが両者の大きな違いです。
富田:その違いは、会社によっては非常に大きいですね。Amazonは裏側で見ることのできる数字が豊富ですが、楽天ではそういった情報が見られません。逆に、楽天はセールが多いため、売れやすいと感じる会社もあります。しかし、全体的に見ると、Amazonの方が伸びるという傾向があるので、その点が非常に参考になります。
小倉:楽天は私の古巣でもあるので、大切にしたい部分がありますが、実際、楽天はYOY(前年同期比)ベースで昨年対比で売上が減少しているという話も耳にします。ただ、楽天は常に新しい勝ち方を模索していると思います。私が楽天にいた頃は、社員ですら知らない新しい取り組みが急に発表されることがありました。「2ヶ月後からこれを始めます」というような感じで。それが、SEOアイコンに表示されるような重要な取り組みだったりもしました。そういったものにいち早く対応し、施策を素早く実行することが展開を変える鍵になります。ですから、戦い方がそれぞれ異なるため、Amazonも楽天も、どちらも攻略し甲斐があると感じています。
商品開発で大事にしていること
富田:商品開発には、OEMや自社EC事業部で行う2つのパターンがあると思いますが、商品開発で大事にしていることは何ですか?
小倉:やはり、一番大事にしているのは、お客さんのニーズを捉えているかどうかです。メーカー目線ではなく、顧客起点で考えることが一番重要だと考えています。ECで販売する以上、レビュー分析や競合分析を通じて、ニーズが見えやすいので、その辺りをAmazonをうまく活用しながら商品開発に生かしています。
富田:先ほどの韓国コスメの話では、実際に韓国人のスタッフがいて、日本市場で売れそうなものをヒアリングしながら進めているというお話がありましたが、現在のモールでの販売においては、レビューや生の声を重視して顧客起点で進めているという点がありました。それ以外に、例えば、顧客インタビューをたくさん行うなどの取り組みはされていますか?
小倉:実際には、多くの顧客インタビューは取っていませんが、例えば「プロテインザプロ」というブランドでは、「次に欲しいフレーバーは何か?」といった具体的な質問を一部の熱心なユーザーに投げかけたり、「現在の(商品に関する)課題は何だと思いますか?」といった形で、定量的・定性的なアンケートを取っています。ただ、最も重視しているのは、レビュー分析です。そこに関しては、とことん取り組んでいます。
富田:特にモールでは、割としっかりとレビューが書かれていますが、Qoo10のレビューには難しさを感じます。Qoo10では、ポイントが目的で、商品が届く前にレビューが書かれることが多いです。
小倉:その点については、私もまだ完全には追いつけていない部分があります。楽天でも昔はよく似たようなことがありましたが、景品表示法などの問題で、それがなくなった経緯があります。今後、Qoo10がどう変わっていくかにも注目していますが、あまりグレーな方法は取りたくないので、もしこのようなレビューの書き方が続くのであれば、どのように対応していくべきかが課題になります。Qoo10は今や無視できないモールになってきたので、その点については今後、しっかりと考えていかないといけないと感じています。
売上げがアップするSNSの施策
富田:では、最後の質問になりますが、実際に四輪の中で、SNSについては各ブランドで10万フォロワーほどいるとおっしゃっていましたが、商品を販売する際にSNSと連携させて売上げが上がった施策があれば教えていただけますか?
小倉:いろいろな施策がありましたので、一番効果があったものを絞るのは難しいですが、SNS施策が大きく反映されるポイントは2つあると思います。まず1つ目は、ECに繋げる部分です。弊社にはSNS広報室という組織があり、そこで追っているKPIは、SNS投稿の反応や、SNSからモールへの誘導数などです。それらをアクセスベースで分析しており、投稿内容によっては、数値が大きく跳ね上がることがあります。こういった点は、非常にうまくいっている施策だと感じています。
ただ、SNSの効果分析は難しい部分もあり、社員の評価もつけづらいところです。しかし、ECメインで売っている企業としては、可視化できる部分をしっかりと見える化し、一定の貢献度を確認できることが重要だと考えています。そして、それが見えることで、SNSへの注力も増していくと思います。
小倉:また、SNSには広い意味でいくつかのタイプがあります。自社で運営しているSNS、他社のメディアで広告的に使うSNS、インフルエンサーに依頼して自社の商品を取り上げてもらうSNSなど、さまざまな形態があります。2つ目の重要なポイントは、マーケティング要素が特に重要な卸の部分です。たとえば、「こういったマーケティングを実施しているから、インフルエンサーが自社の商品を取り上げてくれるので、ぜひ店頭に置いてください」といった形で、SNSを駆使して卸に結びつけることがあります。ただ、商品が良いだけでは、大手メーカーにしか通用しません。そのため、マーケティング施策とセットでオフラインに商品を卸す際には、SNSが非常に重要な役割を果たします。
そのため、SNS広報室という組織を立ち上げました。SNSに注力しているものの、例えば韓国コスメではフォロワー数がまだ数万人であったり、自社メディアでは10万人しかいなかったりしますが、そういった状況でも、コスメ界隈で有名なインフルエンサーとコラボして投稿してもらったり、商品を扱ってもらったりすることは、非常に有効な施策となります。このように、SNSはさまざまな形で活用できるため、非常に重要な要素であり、SNS広報室を設けて取り組んでいます。
SNSには測り知れない効果がある
富田:2つ目の項目でいうと、もちろん、コラボすることで卸(店頭)で商品を手に取ってもらったり、ECでの売上げが上がっていくという効果がありますが、そういったコラボを活用することで、卸の際に良い棚が取れたりしますか?
小倉:まさにその通りです。良い商品があることによって、販売店も商品を前に出したいという気持ちが生まれ、それが実際に棚の配置に反映されやすくなります。その辺りでの効果は測りきれないほど大きいと感じています。
富田:SNSには、目には見えないものがあるんですが、目に見えるものはできる限り可視化できるようにしながら、効果を実感できるようにしていく感じですね。
武内製薬からひと言
小倉:現在、各部門で採用を順次増やしています。さまざまな部門があり、特定の分野に興味がある方には、それに応じた役割を提供できると思います。また、若い組織なので、上を目指して全力で楽しみながら働きたいという方にはぴったりな環境です。もしご興味があれば、弊社のホームページやWantedlyをご覧いただけると、どのような仕事があるかが明確に分かります。
会社のPRとしては、OEMが強みです。今回はOEMについてはあまり詳細にはお話しませんでしたが、弊社は「四輪」の知見を持つ人材が集まっており、その経験がOEM事業に活かされています。自社で製品開発のレシピ決めができる人材が揃っており、自社商品を多く作っているからこそ、多くの原料を扱っています。また、自社工場も保有しており、協力工場も多くあります。そのため、商材に応じて自社工場を使うか、ファブレス工場を利用するか、柔軟に選択できる体制があります。ファブレス工場との関係も強固です。
若いメンバーがスピード感を持ち、マーケティングの知識とコストメリットを意識しつつ、納期を守りながら進められることが、私たちの強みです。既存のOEMのお客様からは、若くてスピード感があることが非常に強みだと言われることが多いです。OEMを依頼する際、他の会社では話が進みにくいこともありますが、弊社ではその悩みを解消できます。価格面でもメリットを提供できますので、OEMのニーズがあれば、ぜひお問い合わせください。
【実績】
【プロフィール】
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」