【ECモール】楽天/Amazon/Yahooショッピングでのビッグデータ活用についてNintの山本さんに聞いてみた。
- 株式会社Nintは国内の三大ECモールの売上推計データを提供している会社
- 3大ECモールは、新しいステージに突入している可能性が高い
- 「Nint ECommerce(ニント イーコマース)」は、ジャンル別に競合ショップや売れ筋商品が把握できる
- 機能の一部を体験できる無料ツール「Nint ECommerce FREE(ニント イーコマース フリー)」をリリース
- 新しい商品を作る際には他社の分析が必要。「Nint ECommerce FREE」が非常に役立つ
読了目安:約分
富田:今回は、株式会社Nintの山本さんにお越しいただきました。
富田:Nintさんというと、業界内での知名度が徐々に高まってきていますが、実際の業務内容についてはご存じない方も多いかと思います。そこで、自己紹介も兼ねて、会社についての紹介をお願いできますでしょうか。
自己紹介と会社紹介
山本:私は、株式会社Nintでデータアナリストをしております山本と申します。弊社について簡単にご説明いたしますと、国内の三大ECモール(Amazon、楽天市場、Yahooショッピング)の売上推計データを提供している会社です。
実際、ECの売上が把握できていないというお客様が多い中、弊社の推計データを活用することで、市場の売上規模を推計し、ご提供するサービスを行っています。その結果、「市場規模が見えるようになった」といったお声をいただいております。実績としては、1,300社以上と契約させていただいております。
弊社は2018年4月に株式会社Nintとして設立しましたが、それ以前は株式会社アドウェイズの一部門として存在しておりました。その頃、中国のEC市場のデータを担当していたため、EC関連のデータについては非常に多くの知見を持っている会社です。
日本の市場の約7割が、Amazon、楽天市場、Yahooショッピングで成り立っており、これらの3大モールのデータの提供と中国のEC市場のデータの提供もしております。
Nintのデータと日本のEC市場
山本:皆さんもお感じかと思いますが、EC市場は引き続き成長を続けています。実際、経済産業省が発表したデータによると、2019年から2022年にかけては右肩上がりの成長を見せていました。特に「EC化率」、つまり全体の売上のうちECで購入された割合を見ると、2022年のデータでは9.13%という数値が示されています。これにより、およそ1割がECで購入されていることがわかります。
EC化の加速には、2019年から2022年がターニングポイントとされており、この期間はコロナ禍の影響でECへのシフトが一層進んだと言えます。ジャンルごとにEC化率は異なり、高いジャンルと低いジャンルが存在します。
EC化率高いジャンル・低いジャンル
富田:どのようなジャンルが高く、また低いのでしょうか?
山本:まずは全体を見てから、3大ECモールの方でもお話しさせていただきます。まず、高い傾向のジャンルとしては、家電や書籍があります。電子書籍が主流になってきており、書籍は高いということが一つの特徴です。また、家電関係ではPCの周辺機器、例えばマウスやキーボードは値段で判断する方も多いということで非常に高い数値が出ています。
逆に低い傾向のジャンルは、食品や飲料、酒類です。
日本の3大ECモール
次に、国内の3大ECモールについてお話しします。
ECモール全体の売上規模や数量規模、平均単価規模はあまり知られていません。全体の概況を把握することはできますが、その詳細な内訳となると、わからないことが多くなります。弊社のツールの特徴は、全体の概況に加え、ジャンルごとのデータをさらに掘り下げて分析できることです。
上の図は、3大ECモールにおける売上、販売数量、平均単価の推移を示しています。青い棒グラフが売上、赤い棒グラフが販売数量、緑の折れ線グラフが平均単価を表しています。上期は1〜6月、下期は7〜12月を指します。
各年の推移を見ると、2019年までは3大ECモールは絶好調でした。しかし、2023年上期に初めて前期を下回る結果となり、2023年下期には再び上昇しましたが、上昇と下降を繰り返す傾向が見られます。この点から、モールのステージが変わり始めた可能性があると推察できます。
年間ベースの市場データは多くありますが、弊社のツールでは月次や半期単位で市場を分析できるため、いち早く市場の変化を捉えることができます。
3大ECモールは、新しいステージに突入している可能性が高いのではないか、というのが現在の特徴と言えるでしょう。
上の図は、3大ECモールの売上推移と平均単価推移を示したものです。左の売上げに関するグラフを見ると、最近になって売上げが徐々に減少し始めており、少しずつ「踊り場」が近づいているように感じられます。一方、右の平均単価に関するグラフでは、全体的に上昇傾向が見られますが、上昇と下降を繰り返している点が特徴的です。
上の図は、モール全体ではなく、ジャンルごとの平均単価の前年比を示したものです。2023年時点では、市場全体で平均単価が上昇していることがわかります。弊社のツールを使用すれば、ジャンルごとの比較が可能となり、さらに詳細な分析を行うことができます。
Nintのデータ作成方法について
では、どうやってジャンルごとやモールごとの売上げを調査しているのかをまとめました。
まず初めに、ビッグデータの収集についてです。私たちは、各サイトで公開されているページを独自にクローリングしてデータを集めています。
次に、収集したデータをもとに、売上げや販売個数の推計を行っています。この推計こそが、弊社の一番の強みであり、アドウェイズ時代の経験を活かして独自に開発したアルゴリズムを使用することで、精度の高いデータを作成しています。
最後に、これらのデータを整理し、分類や分析を行っています。
推計データとリアルデートの乖離
富田:推計データとリアルデータの乖離はどのくらいありますか?
山本:現状、データの精度は約8割程度です。いくつかのジャンルでは、精度が6割強となることもありますが、こちらについては日々改善を進めており、最も精度が高いジャンルでは、現在で約9割の精度を誇っています。
富田:推計の精度がそこまで高ければ、ほぼ全体の傾向や分析については十分対応できると言えますね。
山本:数字の動きという点に関しては、その通りです。ある程度精度が高ければ、こういう動きをするんだと分かります。一方で、精度が荒い点に関しては鋭意改善しております。
Nint ECommerceとは
弊社のツール「Nint ECommerce(ニント イーコマース)」の特徴は、ジャンル別に競合ショップや売れ筋商品が把握できることです。
データを使った分析を「データドリブン」と呼び、これには3つの壁があります。1つ目が「調査の壁」、2つ目が「分析の壁」、3つ目が「行動の壁」です。実際、調査の壁については、どのようなツールがあり、何を調べるべきかについてすでに説明しました。もしこれらがご自身の求めていた内容であれば、「調査の壁」はクリアしたことになります。ぜひ、ツールを活用していただければと思います。
山本:日本のデータ使用環境についてのお話しです。驚くべきデータがありますので、ご紹介いたします。「デジタル活用における調査研究」(令和3年、総務省)の結果によると、「ビッグデータの分析と活用」の項目で、日本の順位が低いことが明らかになっています。特に、2020年の順位は63位で、これは実際に世界最下位に位置しています。つまり、日本はデータ活用が十分に行われていない状況だと言えます。
山本:左の図をご覧いただくとお分かりいただけるように、データの入手先は自社データのみという企業が大多数を占めています。これは、自社のことは理解できるものの、それ以上の情報は得られないという特徴があります。
次に、右の図をご覧ください。これは自社データで確認できる範囲を示したものです。階層で見ると、現状、自社で把握できているのはかなり下層の部分にとどまっています。さらに上層に位置する「ジャンル」といった情報を見ることができていないのが現状です。これは非常にもったいないことで、データ活用を進めるためには、上層の情報を見ていく必要があります。これらは外部や第三者のデータであり、非常に重要な役割を果たします。
ECで売上げを上げるために必要なもの
山本:ECで売上を上げるためには、「品揃え」「閲覧数」「転換率」「単価」の4つが重要です。弊社のツールを使えば、品揃えと単価の改善が可能になります。
先ほど説明したデータ分析による3つの壁のうち、1つ目の「調査の壁」、2つ目の「分析の壁」はこれでクリアできます。残るは3つ目の「行動の壁」だけです。
無料サービスの紹介
山本:「Nint ECommerce」には操作が少し難しい部分があります。そのため、今回新たに機能の一部を体験できる無料ツール「Nint ECommerce FREE(ニント イーコマース フリー)」をリリースしました。こちらは、これまで説明してきたツールの簡易版で、主に「商品の価格」「商品ランキング」「ポイント施策の推移」を確認することができます。
特に商品ランキングは、階層ごとに分かれており、下層と上層のランキング両方を見ることができます。これにより、順位の高い商品を見つけやすくなります。また、ポイント施策の推移は直接的な購買にも繋がります。これらを網羅できる点が、このフリーツールの大きな特徴です。
山本:まず、QRコードを読み取っていただき、ユーザー登録とパスワード設定を行ってください。次に、登録認証と認証コードを入力していただき、Chromeのウェブストアから製品をインストールしてください。
インストール後、各モールで直近7日間の価格推移を確認することができます。気になる商品があれば、その商品を選択することで価格推移をチェックすることが可能です。弊社のツールを簡易的に体験していただいた上で、もし気に入っていただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
Nintさんによる今後のECモールの予想
富田:これまでいろいろとお話を伺ってきましたが、最後にいくつかディスカッションのテーマを用意しています。先ほど、ECモールが踊り場に差し掛かっているという話がありましたが、Nintさんから見た今後のECモールの予想を教えていただけますか?今後もデータは上昇と下降を繰り返すのでしょうか?
山本:私の予想では、恐らく落ち着きは見られるものの、最終的には上昇すると考えています。また、ジャンルごとに差が出てくるのではないかとも思っています。実際、各モールのジャンル別で見ると、伸び続けているジャンルと、少し落ち着いてきているジャンルが直近のデータに現れています。これを考慮すると、今後のECサイトは全体としては引き続き成長するものの、ジャンルごとに差が顕著になってくると予想しています。
富田:実際に商品を作るとなると、自社のデータだけでは限界があると思います。例えば、Amazonではどうなのか、楽天市場ではどうなのか、といった他社分析が必要になってきますよね。そうなったとき、今後、落ちる可能性のある市場で商品を作っても、売上げを上げるのは難しいと思います。ですから、次に伸びそうなジャンルを見極めて、その市場に賭けることが重要だと考えています。
新しい商品を作る上で大切なこと
富田:今後、Amazon、楽天市場、Yahooショッピングなどで販売する新商品を作る際に大切なことは何だと思いますか?
山本:消費者のニーズが日々変化していることに注目することが大切だと思います。これは非常に難しいことで、まず一つ目に、消費者の思考の変化が平均単価の動きにも現れている点が挙げられます。確かに、モールでの単価は上昇していますが、乱高下が見られることから、適切な価格帯の設定が重要だと思います。これはいわゆる「中の部分」にあたります。
一方、外部的な要素としては、販促があまり行われていない商品でも飛び抜けて売れているケースがあります。その理由を探ると、例えば、GoogleトレンドやYahoo!検索で急激に注目を集めていることがあるほか、SNSの影響でインフルエンサーが取り上げたり、何かが公開されることで需要が急増することもあります。このように、内部と外部の両方の視点から物事を見ることが不可欠だと考えます。
富田:そういった中で新しい商品を作るとなると、他社の分析が必要です。そういったときは、先ほどご案内した無料ツール「Nint ECommerce FREE」が非常に役立つと思います。気になる方はぜひお問い合わせください。本日はありがとうございました。
山本:ありがとうございました。
【実績】
【プロフィール】
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」