TikTokインフルエンサーマーケティング活用大全
- TikTokは「知らない人が見てくれる」「ショート動画のインパクトが大きいこと」がポイント
- TikTokは認知を獲得する上で有用なメディア
- 見た目や生活が改善されたことを視覚的に表現できる点にTikTokの最大の特徴
- 吟味しないと最終購入に至らない高価な商品などはTikTokでの効果が出にくい
- クリエイターとの仕事は生もののようなもの
- クリエイターをアサインには優先順位を決めることが最も重要
- TikTokの成果の測定方法はケースバイケース
- インフルエンサーマーケティングの効果を出すための予算もケースバイケース
読了目安:約分
本日は、弊社が日頃よりお仕事をご一緒させていただいている株式会社Nateeの朝戸さんをお迎えし、TikTokのインフルエンサーマーケティングについてお話します。
自己紹介
富田:では、自己紹介からお願いします。
朝戸:はじめまして。Nateeの朝戸と申します。Nateeという会社は『人類をタレントに』というミッションの下、現在ではTikTokやショートムービーを中心にクリエイターを活用したSNSマーケティング支援の事業を運営しております。
昨年の2月に『TikTok活用大全』という本を書きました。「日本一地に足のついたTikTok本」と自称しておりまして、クライアントさんやクリエイターさんのインタビューを多数掲載しておりますので、これからTikTokを活用したいと考えていらっしゃる皆さんは、ぜひご一読ください。
富田:私もすでに読ませていただきました。
朝戸:ありがとうございます。
富田:Nateeさんは、インフルエンサーマーケティングの代理店だけではなく、TikTokの事務所を構えていらっしゃいますよね?
朝戸:現在は事務所事業と代理店事業と、一部、生成AI系事業を運営しています。
富田:僕の好きなTikTokerのウンパルンパさんも御社専属ですよね。
朝戸:はい。ウンパルンパさんをはじめ、TikTokやショートムービーで著名な方で、尚且つビジネス感覚がしっかりとしているクリエイターさんだけが弊社の事務所には所属しています。そこは自信をもってご提案できるところです。
Nateeの実績
徹底した自社一貫型事業
富田:では、Nateeさんの会社の実績についてお聞かせください。
朝戸:6年ほど前からショートムービーに特化してきたため、各業界のトップランナーであるお客様との実績が豊富です。我々のような業態では、通常は代理店を通じた商流が多いのですが、弊社は創業当初から直販にこだわり、売上の8割を直販で占めています。さらに、国内外を問わずナショナルブランドとの仕事実績が多く、これらの企業との長期的なお付き合いの中で、直販であることの利点を活かしながら、売上成果や最終的な事業戦略に繋がるように伴走してきました。これが弊社の特徴であり、実績です。
TikTokなぜ有効?
AIの発達とショート動画の強み
富田:ではさっそく、テーマディスカッションに入ります。なぜ、TikTokが有効なんでしょうか?
朝戸:TikTokが有効な理由は2つあると思います。まず1つ目は「知らない人が見てくれる」という点です。フォロワーの有無に関わらず動画が広がりやすいのは、AIのアルゴリズムが非常に発達しているからです。これにより、初めて知る商品や情報を目にする機会が増え、TikTokが発見の場として非常に有用です。
もう1つの理由は、ショート動画のインパクトが大きいことです。1分以内という短時間の中で変化や感情の起伏が生まれるため、画像やテキストに比べて視聴者が態度変容を起こしやすいため、マーケティング施策として有効だと考えられます。
TikTokが向いている商材は?
変化がわかるかどうか
富田:TikTokは認知を獲得する上ですごくいいメディアだと思います。その中でも、成果が出やすい業界と出にくい業界がありますか?
朝戸:TikTokを通じた成果をどこに置くかということは重要ですが、成果が出やすいかどうかは業界による違いよりも、サービスの特徴に依存します。
ショート動画を活用することで効果が出やすいのは、ビフォーアフターがはっきりと分かるものです。見た目や生活が改善されたことを、視覚的に表現できる点にTikTokの最大の特徴があります。
こうした変化を視聴者に伝えることで、認知や興味を引き、購買意欲につなげやすいサービスは、TikTokとの相性が良いと考えられます。
そういった意味では、例えば化粧品やヘアケアのような商品は、ビフォーアフターがとても分かりやすく伝わります。さらに、金融商品なども人気があり、それを活用するとどう変わるかを説得力を持って伝えることで、視聴者の感情を動かしやすく、成果につながりやすいと思います。
一方で、成果が出にくいのは、ビフォーアフターの変化を見ても視聴者の心を動かしにくい商品です。例えば、とても高価な商品が該当します。動画を観て車を購入するかどうかという点ですが、たった1本の動画だけで車を買うという意思決定に至るのは難しいでしょう。
つまり、吟味しないと最終購入に至らない高価な商品などは、TikTokでの効果が出にくいと言えます。
パートナー選びのポイント
インフルエンサーは生もの
富田:TikTokでインフルエンサーマーケティングをやる上でのパートナー選びのポイントを教えてください。
朝戸:インフルエンサーマーケティングのパートナー選びについては、違いが分かりづらいというご意見をよくいただきます。
私たちのように事業を営む者の視点から見ると、大きく2つのポイントがあると思います。
1つ目は、どのような成果を期待するかです。認知向けの施策に強い会社もあれば、成果獲得に強い会社もあります。得たい成果に応じて、どの業界や生活圏に強いかを見極めることが重要です。
もう1つは、オペレーションです。インフルエンサーマーケティングの経験がある企業様からは、事故が多いという声をよく耳にします。
クリエイターとの仕事は生もののようなもので、イレギュラーな事態が多発したり、コミュニケーションがうまく取れずに問題が発生しやすいという話をよく聞きます。
そのため、施策を始める前に、こうしたリスクをどう防ぎ、どう対処するのかを確認しておくことをおすすめします。
効果的にクリエイターを選ぶなら
最優先事項を決める
富田:インフルエンサーマーケティングで企業はクリエイターをアサインしますが、どういったところに気を付けるべきでしょうか?
朝戸:各企業において、優先順位を決めることが最も重要です。例えば、ブランドイメージを大切にする企業であれば、最優先すべきは炎上リスクの回避です。そのため、リスクの観点からインフルエンサーを選ぶべきです。
一方、多少尖ったやり方でも話題性を重視したい企業の場合、その世代で話題を生み出せるコミュニティを見つけ、そのコミュニティに属するクリエイターを起用することが重要です。
まず、それぞれの優先順位を決めた上で、それに基づいたキャスティングや仕分けを行うと良いでしょう。
再生に関する情報を確認できるか?
定量的なデータをすべて自動抽出
富田:再生回数がどのくらいあるかわかるツールなどを活用していますか?
朝戸:私たちは、直近の再生回数やエンゲージメントなど、定量的なデータを自動的に抽出できる仕組みを持っています。再生数を重視するお客様には、これらのデータが見えるようにしています。
さらに、業界との親和性やクリエイターコミュニティとの相性についても、裏側でクリエイターにタグ付けを行っており、その情報も確認できるようにしています。
また、炎上リスクについては、表に出ている定量的な情報だけでは見えづらいため、過去の経験を基にデータを蓄積し、リスク度を評価する取り組みも行っています。
富田:そこまでできているのは、かなり強いですね。
朝戸:TikTokに特化して長くやってきたので、そういったところが強みです。
アサインした後の流れ
企業とクリエイター間の通訳者
富田:クリエイターをアサインした後の流れはどういったものでしょうか?
朝戸:私たちの仕事は、広告主(企業)が求める読後感や訴求したい内容と、クリエイターさんの自分たちらしさを両立させるために、両者の間で翻訳を続けることです。
最初に構成案を作成しますが、その段階からクリエイターさんらしさを活かし、内容を充実させるためにアイデア出しから伴走します。そこで生まれたクリエイティブに対して、今度は企業目線で修正したい点や、より良くしたい点をインプットし、それを私たちの言葉でクリエイターさんに伝えます。
このように、まさにキャッチボールをしながら制作のディレクションを進めています。
富田:工数としては、結構重いのではありませんか?
朝戸:初めてのお客様からは、想像していたより細かいキャッチボールが多かったというご意見をいただくことが多いです。その点に関しては、お仕事させていただく前に確認しておくと良いと思います。
成果の振り返り方
商品に対するエンゲージメント
富田:TikTokの成果はどのように振り返っていけば良いでしょうか?
朝戸:成果の計測方法は、例えば、オフラインの小売店の商材など、最終的な売上げまで測ることのできないケースと、オンラインなどで測れるケースとがあります。
測定が難しい場合には、エンゲージメントを重視し「保存」と「コメント」を見ます。保存は後で見返したいと思うほど参考になったり、面白かった証拠なので、その再生回数に対する保存率やクリエイターさんの通常の保存率に対して、今回の案件動画がどれぐらい保存率が高いかどうかというところを確認して、視聴者にとって後から見返したいレベルで記憶に残るコンテンツであったかどうかをチェックしています。
もう1つはコメントです。クリエイターさんの容姿や面白さに関するコメントが多い場合、動画がバズっても商品が売れないことがよくあります。そのため、商品に関するコメントの割合を算出しており、この数値が特定の割合を超えていると売上げに影響を与えやすいという知見を蓄積しています。
一方で、オンライン上で購買が完結する場合には、基本的にCPA(顧客獲得単価)やCPO(注文獲得単価)といった指標でデジタルマーケティング施策の効果を評価しています。
富田:そこまで計測しているのは、さすがです。
朝戸:ツールで通常の平均が抽出できるので、そこの差異を出しています。
富田:他社でもおそらく、一定の規模感がないと平均を抽出できないと思います。
朝戸:日頃からクリエイターの方々とよく会話をしていますが、私たちや企業様も、何が具体的な成果につながっているのかが正直に言うと完全には把握できていない部分があります。しかし、クリエイターの方々と確認する中でわかることもあります。例えば、保存数が多いコンテンツには、その後「買ったよ」といったファンの反応が多く寄せられることがあるほか、ファンの反応がどれくらい商品に結びついているかなども、最終的に数字として表れる成果に違いが見られることがあります。こうした情報を基に、私たちは定性的な関係性の中でのブラッシュアップを進めています。
富田:そういった点で、社内に(クリエイター)事務所があることはかなり強いと思います。
予算はどのくらい必要か?
話題作りや売上増、目標別予算目安
富田:クライアントの規模にもよると思いますが、インフルエンサーマーケティングの効果を出すためには、どのくらいの予算が必要でしょうか?
朝戸:確かに、お客様のご予算や日頃の商品の配荷量、CV(コンバージョン)の状況などによって、それぞれかなり異なります。
そのため、一般的な話よりも個別のケースについてお話しさせていただきます。いくつかの事例を挙げて説明いたしますと、オンライン上で全て購入まで完結するデジタルマーケティングの場合は、予算が小さくてもCV(コンバージョン)をひたすら追う形で効果を上げることができるため、予算の幅はそれほど大きくないことが多いです。
一方、オフラインの売り場での商品販売に関しては、例えばある企業様からは、元々薬局の片隅であまり目立っていなかった商品を少ない予算で売上を回復させたいというご相談をいただきました。その際には、500~1,000万円の予算でTikTokのキャスティングとディレクションを進めた結果、売り場での売上が大きく伸び、数年ぶりに総売上が回復したという成功例がありました。
また、別の事例では、ショートムービーだけでなく様々なデジタルマーケティング施策を組み合わせている企業が、TikTokやショートムービーの一部を切り出して動画投稿を行う期間を設け、500~1,000万円以上の予算を設定した結果、前年と比べて有用な売上成果が見られたケースも多くあります。
オンライン系の場合は、成果が上がる可能性が高いため、予算を効果的に回すことが推奨されます。特にモールに関しては、数百万円程度の予算でも検索を含めてリフト効果が期待できる場合があります。
一方、配荷量の多いプロダクトの場合には、1,000万円前後の予算を確保することが必要になると思います。
富田:貴社では、少額な案件から1,000万クラスまで幅広く提案されているということですね。
朝戸:はい。幅広く提案させていただいています。
富田:今回は、株式会社Nateeの朝戸さんにお越しいただき、TikTokマーケティングについてお話を伺いました。まだ、『TikTok活用大全』を読んでいらっしゃらない方は、ぜひご一読ください。そして、TikTokのインフルエンサーマーケティングに興味のある方は、Nateeさんにお問い合わせください。
プロフィール
富田竜介:株式会社TaTap代表
企業様向けSNSアカウント運用代行/コンサルティング/社内化支援/社内研修承ります。
著書:「99%の経営者は知らない中小企業のための正しい SNSマーケティング」