2024.05.01

広がる公的機関のSNSアカウント運用

snsX(旧Twitter)instagramLINEYouTubeトレンドアカウント運用
Pointこの記事でわかること

読了目安:約

目次

近頃、皇室のインスタグラムアカウントがフォロワー数100万人を超えたという話題で沸きましたが、SNSの普及に伴い、政府や地方自治体など公的機関でも積極的にSNSを活用して、町おこしや観光のためのPR、移住促進などさまざまなテーマでの情報発信を強化する事例も増えてきました。

さらには、SNSの特性を利用した行政サービスも始まっています。個人や企業のSNSアカウントとはややその役割や目的などに違いがあるようです。

日本におけるSNSのはじまりから現在への流れ

本格的に SNS が普及し始めたのは、2000年代初頭。今とは違い、携帯から見ることのできる Web サイトは、一部に限られていました。2007年にApple から「iPhone」が発売されると携帯電話そのものの概念が大きく変革。パソコン主体のSNSは徐々に衰退し、スマートフォンアプリとして現在も利用されている「Facebook」や「Twitter(現材のX)」などがリリースされました。

2012年に携帯電話の「4G」化と料金の定額化がはじまると、スマートフォンでもスムーズな動画の閲覧や、画像のアップロードができるようになり、それを機に台頭してきた SNS が「Instagram」「YouTube」「LINE」です。

2020年台には「TikTok」「note」などが誕生し、個人・企業・自治体などの公的機関まで幅広く利用されるようになりました。今日、SNSの使われ方にも変化が起き始めており、ただ知人の近況を知るツールではなく、より自分に合った有益な情報を得るためのツールへと変化してきているようです。

実はずいぶん前から公的機関でのSNS活用は始まっていましたが、様々な理由によって頓挫する例が多くみられました。高齢者が多い自治体ではスマートフォンの利用率が低く、SNS導入のメリットがあまりなかったり、基本的に多くの行動に上司の決裁などが必要な役所と即時性が求められるSNSとの相性が合わなかったり、投稿担当者の知識のなさが原因で、炎上を招いてしまったりすることもありました。

ただ、原因に合わせて試行錯誤を繰り返すことにより情報発信力を上げ、SNSで成功を収めた例もたくさんあります。成功している事例で共通しているのは、どの自治体もやみくもに多数の写真や動画などを投稿しているわけではなく、事前に時間をかけて練られた戦略が非常に具体的であるという点です。

目的に応じてSNSを使い分けたり、複数のSNSアカウントで情報を発信するなど、様々なアイデアで人気を獲得している事例も少なくありません。また、行政のITC化が進む中、SNSを活用した住民サービスも各自治体で広がっており、生活のインフラと言える存在になりつつあります。

デジタル田園都市国家構想と自治体DX推進計画

新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延という未曾有の事態において、データ活用が十分でなかったことにより政府や自治体の対応に遅れが出るなど、様々な課題が明らかになりました。また、人口の減少や少子高齢化、地方の過疎化・首都圏への一極集中化が加速するのを阻止するためにも、デジタル化による地方活性化を図っていくことが求められています。

令和2年12月25日の閣議決定で「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が策定され、令和3年9月にデジタル庁が発足。令和5年6月には、デジタル社会形成基本法第37条第1項等に基づく「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が改めて閣議決定されており、制度や組織の在り方などをデジタル化に合わせて変革していく、社会全体のデジタル・トランスフォーメーション化(DX化)が進行中です。

政府が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現には、住民に身近な行政を担う自治体、とりわけ市区町村の役割は極めて重要であり、自治体のDXを推進する意義は大きいとされています。これを受けて、自治体ではSNSを使った情報発信や行政手続のオンライン化など、市民がデジタルを活用することができる環境の整備が進められています。

携帯電話所有者のスマートフォン比率97%

図1. 携帯電話所有者におけるスマートフォン比率[調査対象:全国・15~79歳男女] 

NTTドコモ モバイル社会研究所では、2024年1月に携帯電話(スマートフォン・フィーチャーフォン)の所有動向について調査を実施。モバイル社会研究所で調査を開始した2010年には日本国内におけるスマートフォン比率は約4%でしたが、2015年にスマートフォンの比率は5割を突破し、2017年に7割、2019年に8割、2021年には9割を超え、2024年には97%になりました。

(出典)総務省「通信利用動向調査」インターネット利用率(個人)の推移

総務省による端末別のインターネット利用率(個人)はスマートフォンがパソコンを22.6ポイント上回っていて、1日あたりのスマートフォン利用時間も年々増加傾向にあり長時間利用する人が約半数を占めています。デジタル化による地方活性化の推進とスマートフォンの普及による住民の情報収集手段の変化が、自治体や公的機関のSNS活用拡大に大きな影響を与えていると言えます。

Twitterから移行したXの仕様変更に翻弄される公的機関アカウント

旧Twitterには公共機関がTwitterアカウントを開設する際、専用ページから手続きすることで認証申請やまとめページへの掲載が一元的に行える仕組みがありました。公共機関が「認証済みアカウント」を得るまでの手間と時間を大幅に短縮できたので、Twitterを活用した情報発信が盛んに行われ、大切な情報インフラとなりました。

しかしながら、運営会社がX社に変わると様々な仕様変更が行われ、以前のような使い方ができにくくなりました。多くの自治体では、避難情報を発信する際、APIと呼ばれる仕組みを使ってXに自動で投稿していましたが、仕様の変更によって自動投稿の回数が制限されるようになったため、投稿をやめざるをえなくなるケースが相次ぎました。

閲覧制限も掛けられ、利用者が災害時の防災情報を得るのにも支障が出ました。災害時に避難情報などの発信ができなくなった自治体は、防災情報をメールやホームページなどで確認するよう呼びかけるほか手段がなく担当者は頭を抱えることに。

ツイッターは地域の情報をリアルタイムに確認できる速報性という点では、ほかのメディアを圧倒していたので、閲覧規制がかかったからすぐに代わりを探すのということはとても難しいことだったのです。

2023年8月、Xの日本のアカウントは「公益的な目的でのAPI活用は大変重要です。政府・公的機関からの、重要な防災・災害情報に関しては、APIの無償利用が可能です」とする声明を投稿し、政府や公的機関からの防災・災害情報の発信については自動で投稿できるよう対応すると明らかにしました。

また、Xではグレーの認証バッジはXが公式に認証している本物の各国の政府機関や公的機関、国連など国際的な機関であることを表しています。日本では内閣府公式Xページほか、複数の機関が公式アカウントを保有していますが、突然、自治体などのアカウントが「凍結」されるケースが相次いでいるため、Xに依存しすぎない情報発信の体制構築が必要とされています。

内外に向けて魅力を視覚的にアピールできるInstagram

自治体では、主に観光誘致や移住促進を目的として利用されているInstagram。写真や動画での投稿が地元情報の発信に適しているため、地域活性化や移住促進、インバウンドを含む観光促進などにも有効です。視覚的に訴求できるので海外ユーザーの目にも届きやすく、世界規模で多くのフォロワーを獲得している自治体の公式アカウントもあり、日本語の文章に加えて英語や韓国語、中国語などの翻訳文が掲載された投稿も増えました。

オリジナルで作成したハッシュタグ「#〇〇〇」を付けた投稿を募集して、実際に集まった投稿の中からピックアップして紹介するなど、双方向性を生かしたアプローチで人気を博しているアカウントも。インスタグラムユーザーの多くはハッシュタグ機能を使用して写真を検索するので、観光地の名称や名物などをハッシュタグを付けて記入すれば、より多くのユーザーに見てもらえる可能性が広がります。

長尺の地域PR動画を配信できるYouTube

InstagramやTikTokなどでも動画を投稿することはできますが、長尺の動画を配信するのに適しているのがYouTubeです。中央省庁をはじめとする国の機関・組織、各都道府県などの公的機関の多くが公式チャンネルを開設しており、なかにはYouTuber並みの登録者数を誇るアカウントもあります。
PR動画の配信・情報の共有化・ニュース媒体としての役割を担い、幅広い年齢のユーザーに向けて効果的に情報発信ができるツールとして、その人気は衰えません。

住民サービスの向上や地域の活性化に利用が広がるLINE

ユーザー同士で、無料でメッセージのやり取りや音声通話、ビデオ通話ができるLINE。その機能を利用したサービスが政府や自治体をはじめとるする公的機関でも広がりを見せています。 

■欲しい情報だけをセグメント配信

友だちになったユーザーにプッシュ通知で情報を配信することができる。属性や欲しい情報を予め設定してもらうことで、ユーザーが必要な情報のみを選択的に受信できる「セグメント」配信が可能に。

■AIチャットボットによる問い合わせ対応の自動化

ユーザーが入力した質問に対しAIチャットボットが自動で回答。これにより、24時間いつでも問い合わせに対応することが出来る。また、回答のデータベースとなる「FAQ」は、各行政機関の既存のサービスやホームページ等からの情報をもとに構築。

■キャッシュレス決済

公共料金(電気、ガス、水道)や公金(税金や介護保険料、公営住宅料、保育料等の各種料金)の支払いにおいて、LINEアプリ上で使える決済サービスLINE Payの「請求書支払い」を活用。幅広く導入が進んでおり、外出を控えながらお支払いを可能にするユーザーにとっての利便性の向上と同時に、収納率や業務効率向上にも貢献している。

■行政手続きのオンライン化

行政手続きの申請・決済をLINE公式アカウントとのメッセージのやりとりを通して行うことで、ユーザーにとってアクセスしやすい行政窓口を提供。住民票の写しや納税証明書申請などで活用されている。

ホームページとSNSの機能を併せ持つ新しいプラットフォームnote

クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿して、ユーザーがそのコンテンツを楽しんで応援できるメディアプラットフォームとして利用されてきた「note」は自治体に対して、オウンドメディアやホームページ構築が簡単にできる「note pro」を無償提供し、さらにnoteディレクターによる運用フォローアップも行い、自治体の情報発信を支援することを発表しました。

■noteの地方公共団体支援プログラム概要

お気に入りの記事をまとめたり、テーマに沿って分類したりできるnote独自の「マガジン機能」を活用すれば、キュレーションメディア(まとめサイト)を作成することができるなど、様々な活用方法があることも魅力。

地域・行政に関する公式noteでは、広報発信を行う自治体の記事の紹介やインタビュー、観光・ふるさと納税・移住に関するマガジンなどがまとめられており、この公式noteから新規ユーザーの獲得を見込める要素も十分です。

支援プログラムの対象は自治体・学校・文化施設、現在は省庁向けにも展開中。今後、さらなる発展がが望めるプラットフォームとして期待されています。

SNSの特性を生かしてうまく活用するにはまずプロに相談を

各SNSにはそれぞれ得意分野やメインターゲット、運用方法などに違いがあります。間違った使い方により炎上を招くリスクも考えなくてはなりません。

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